<保育漂流>自治体の入園順位ポイント制 「常勤・共働き」有利な基準

写真


東京新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
保育園の入園希望者が多い自治体の多くは、「ポイント制」(指数制)と呼ばれる評価基準を設けて、入園の優先順位を決めている。「多くの入園希望者を公平に評価する仕組み」(ある自治体)としているが、非正規雇用や自営業などの職業の保護者は点数が低くなりがち。より公平な評価を求める声が強い。
  (稲熊美樹)
 ポイント制は主に▽両親の就労時間▽働く場所が自宅以外かどうか-の二つの基準でランク付けする。同じランクの場合、▽育児休業明けは加点▽きょうだいが同じ園に通っていると加点▽六十五歳未満で働いていない祖父母が同居していると減点-などの別基準で再評価する。自治体ごとに基準は異なる。
 「保護者が週四十時間以上就労している場合」は、入園の優先順位を最高ランクとする自治体が多い。
 ところが、「常勤の共働き夫婦」が上位ランクに入りやすく、非正規雇用や自営業の場合にはランクが下位になる自治体が多い。育児休業明けで入園させることを優先する国の方針が、その背景にある。
 育児休業取得が難しい非正規雇用の場合、妊娠すると雇用期間終了時に雇い止めされ、再び就職するため子どもを預けようとしても、ポイント制では「求職中」の扱いで下位ランクに位置づけられ、結果的に入園が難しくなってしまう。正規雇用と同じ労働時間でも、非正規雇用のランクを低くする自治体もある。自営業の場合は、「職場で子どもの面倒を見られる」として減点されたりする。
 ポイント制に詳しい「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「保護者の声に耳を傾け、毎年細かな変更を重ねる自治体もあるが、誰もが納得できる制度にするのは難しい。そもそも保育園が足りないから起きる問題」と指摘する。

◆「退園になる」と心配/やむなく認可外へ

 「私の生き方を否定されているような気がするんです」。中部地方の大学で非常勤講師を務める三十代の女性は、ポイントの基準に疑問を投げかける。
 子どもは小学生とゼロ歳の女児。入園希望者が多い都市部の“激戦区”に住んでおり、下の子は三歳児までの認可保育園に通わせている。「来年三月に退園させられてしまうのでは」と恐れている。
 四大学で週に計六こま(一こま九十分)の授業を掛け持ちしているが、授業自体は月間三十六時間しかなく、居住自治体が示す六十四時間以上の保育の必要性を認定する条件を満たさないためだ。しかも、今の園は四歳児以上の子どもは受け入れていないため、新たな保育園探し(保活)を迫られる。
 授業の準備やリポートの採点など、月間二百時間以上働いている。役所の窓口に行き「授業を何こま持てば入園条件を満たすのか」と聞いても、明確な答えはなし。このため、前期は可能な限り八こまの授業を詰め込んだが、睡眠時間が取れなくなり後期は減らした。「非正規の働き方でも安心して預けられるようにしてほしい」
 一方、十一月まで自営業だった東京都の女性(39)は、長女(1つ)の認可保育園の入園を希望したが入れず、保育料の高い二歳児までの認可外保育園に通わせている。認可保育園に入園できなかったのは、「自営業でポイントが低く付けられたため」だ。
 来年度の保活のため、就職活動して正社員になったが、「自営業でも子どもがいたら仕事はできない。それなのに保活ではあまりに不利」と憤る。
------------------------------------------------------------------------------------------------