鎌倉市職労が立ち退き拒否してプレハブに籠城中! 学童保育施設に黄信号 身勝手な“闘争”に市民もあきれ顔

鎌倉市職員労組が事務所を置くプレハブ建物。深夜まで明かりが灯る=鎌倉市御成町
鎌倉市職員労組が事務所を置くプレハブ建物。深夜まで明かりが灯る=鎌倉市御成町
産経ニュース
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神奈川県鎌倉市で、市所有の小さなプレハブ建物をめぐり、市と市職員労働組合(市職労)が激しく対立している。建物は市職労が長年事務所として使用してきたが、共働きや一人親家庭の児童を預かる「学童保育」施設の建設のために市が解体を決定。これに反発する市職労は、組合員の“24時間”籠城で徹底抗戦する。業を煮やした市が組合側に事務所の明け渡しを求める仮処分を横浜地裁に申し立てるが、決め手に欠き、攻防は膠着状態に陥っている。
「24時間態勢」
 平成27年12月上旬のある日の未明、鎌倉市役所に隣接するプレハブの組合事務所にはこうこうと明かりがともったままだった。
 窓から見える室内では、支援者とおぼしき高齢の男性がくつろぎ、壁には「市長は憲法を守れ」との寄せ書きが張られていた。
 学童保育施設の建設に向け、市が事務所の「退去期限」として示したのは10月末。翌11月1日から、同事務所は組合員や支援者が「24時間態勢で籠城している」(市幹部)という。
 籠城の理由について、組合は「10月末までは、守衛室に鍵を預けていたが、11月以降は市が使用許可を認めていないために、鍵を戻してしまうとそのまま回収されてしまう」と説明、「誰かが事務室にいる状況にしなければならない」とする。
事情に詳しい市関係者は「組合事務所を留守にしていると、『市が事務所の鍵を付け替えるのでは』と心配しているようだ」と推察する。
強気の市職労
 事の発端は26年11月にさかのぼる。共働き世帯の増加などにより、学童保育施設のさらなる整備が必要となったことから、市は候補地として小学校に近く、市所有地でもある市職労事務所の敷地が「最適」として提案した。
 市議会も同年12月に事務所などの解体費用(2800万円)を盛り込んだ補正予算案を全会一致で可決。市は27年3月末までの退去を組合側に要請した。
 慌てたのは組合側だった。かつての革新市政のもと、「日本一高額な退職金」を誇り、「国内自治体では最強」と呼ばれた市職労にとって、活動拠点の喪失は「大きな痛手」となりかねないからだ。
 組合は事務所の電気・ガス料金を支払っていたものの、賃料については長年にわたり全額免除されていた。
 しかし、組合側は事務所退去の期限を“無視”したうえ、市に庁舎内に移転先を確保するよう要求。
 市は「空きスペースがない」ことから、移転先として現在地から約1キロ離れた消防署やゴミ処理施設内の利用を打診したが、組合側は「昼休み中のミーティングを行うには、組合員が集まることができる場所以外には認められない」と主張し、提案を拒否したのだった。
不祥事で攻守逆転
 強気を示した組合側だったが、その直後、身内に足下をすくわれる驚愕の事実が判明したのだ。
長島竜弘市議の調査で、組合副委員長だった男性職員が、約2年間にわたり計44回も遅刻していたにも関わらず、出勤簿を改竄していた事案が、9月の定例市議会で発覚。しかも副委員長は遅刻を改竄するよう部下の組合員に指示していた。これを受け、市は電磁的記録不正作出・同供用の疑いもあるとして、告訴を検討する事態にまで発展した。
 これをきっかけに、市の組合に対する攻勢が一気に強まった。
 市議会では、組合事務所について「(霞が関の経済産業省敷地内にある)『反原発テント』と同じ。電気・ガスも止めて追い出すべきだ」(上畠寛弘市議)などと批判の声が上がり、市も「不法占拠」と見なし始めた。11月には、横浜地裁に事務所の明け渡しを求める仮処分も申請した。
 こうした攻勢に対して、市職労は退去期限が過ぎた11月以降に籠城を開始し、県労働委員会に救済申し立てを提出。12月13日夜には、観光客でごった返す休日の鎌倉駅前を約100人の組合関係者が「組合つぶしはいけません」と記された横断幕を掲げてパレードを行うなど、抗戦の姿勢を崩していない。
 建物の解体費用を盛り込んだ補正予算の執行期限は平成27年12月31日。学童保育施設の建設計画そのものが危ぶまれる事態にもなっている。
 こうした組合活動のあり方について追及を続ける松中健治市議は「子供たちこそ守られるべきだ。なぜ組合の主張が優先されるのか。理解に苦しむ」と語気を強める。
 あまりの混乱ぶりに、非組合員の若手職員は冷ややかに吐き捨てる。
 「組合のせいで市職員全体が、市民からの信頼を失いかねない」
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