もし世界中の女性が母乳育児をしたら82万人/年の命が助かる…!?

もし世界中の女性が母乳育児をしたら82万人/年の命が助かる…!?
CIRCL(サークル)
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母乳育児をするかどうかは、お母さんが自身の考え方や環境によって決められる。筆者は、子どもは完全母乳で、と考え、そのように育ててきた。わが子とのスキンシップという理由もあるが、母乳の免疫力に魅力を感じたからだ。
 母乳には免疫成分が含まれていて、赤ちゃんを感染症などから守ってくれる。母乳の免疫がどれぐらいの期間続くかについては議論があるが、実際に風邪をひいた頻度などから考えると、身をもって「母乳が赤ちゃんを守ってくれた」と実感できた、と言える。

母乳が乳児とお母さんの命を救う?

 ブラジルのペロタス連邦大学のセザール・ビクトラ教授は、母乳の魅力を語り、母乳育児を勧める科学者の1人だ。そして、興味深い数字をはじき出した。「もし世界中の女性が母乳育児をしたとしたら、1年に80万人の子どもの命を救い、2万人のお母さんを乳がんによる死亡から守る」というものだ(※1)。
 高所得国では、母乳育児率が3分の1以上になれば、子どもの突然死のリスクを低くできること。低所得国では、下痢症状の半分を防ぎ、呼吸器感染症の3分の1を防ぐことができるとした。
 また、母乳は子どもの知能を向上させ、その後に懸念される肥満や糖尿病からも守ってくれる可能性が高いという。

大きな経済効果も

 母乳育児だとミルク代がかからなくて済むという話はメリットとしてよく挙げられるが、ビクトラ教授が示す母乳育児の経済効果は、そんな小さな規模ではない。子どもやお母さんの病気が減ることで、医療費を抑えることにもつながるからだ。
 研究チームは、アメリカ、中国、ブラジルにおける6カ月以下の乳児の母乳育児率が90%になったら、アメリカで25億ドル、中国で2億2400万ドル、ブラジルで600万ドルの医療費の削減につながると試算した。

現状は低い母乳育児率

 母乳育児がもっと広まれば、これだけの効果が得られる可能性がある。しかし残念ながら、世界の母乳育児率は、高所得国で5人に1人、低所得国で3人に1人と、とても低いのが実情だ(※1)。
 厚生労働省の調査でも、日本の母乳育児率は、生後0カ月では48.6%なのに、半年後には34.7%にまで下がってしまう。日本も他の国々と同様、それほど高いとは言えない(※2)。

母乳が出て、赤ちゃんも飲むならぜひ母乳育児を

 母乳育児によって多くの命を救え、経済効果までも見込めることをお分かりいただけたと思う。
 しかし、母乳育児は、出産した病院などのサポート体制がないと難しい場合もある。また、未熟児で生まれてきた場合や、うまく母乳が出ない場合、出ても赤ちゃんがうまく飲めない場合など、さまざまな難しさもある。
 母乳が出て、赤ちゃんも飲んでいるのに「スタイルが崩れるかもしれないから」「大好きなお酒が飲めないから」と、早々に母乳育児を切り上げてしまうことも意外に多いことを耳にする。でもそこは数ヶ月の辛抱、お母さんにはぜひ母乳育児をおすすめしたいところだ。
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