子育て支援 入所対象6年生まで拡大 待機児童、学童保育も増 受け皿整備が追いつかず

保育士さんと子どもたち(カラー)


毎日新聞
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放課後や夏休みなどに小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)で、入所を申し込んでも定員超過で利用できない待機児童が増えている。国は昨年4月、おおむね3年生までだった入所対象を6年生まで拡大した。4年生以上の保護者の就労を支える子育て支援の一環だが、ニーズに受け皿整備が追いついていない。保育所の待機児童問題がクローズアップされる中、保護者らは「小学生の待機児童にも目を向けてほしい」と訴えている。【青木絵美】
     <定員よりも多くの申請があり、子どもたちを安全に保育していくためにも、4・5・6年生は待機とさせていただきます>
     今年2月、福岡県古賀市に住む介護士の女性(36)に市から通知が届いた。小学校に併設されている学童保育を利用してきた3年生の長女が、4年生になる4月から利用できなくなることを伝える内容だった。同市でも昨春から学童保育の対象は6年生まで広がったが、施設によっては全員を受け入れる余裕がなく、2016年度は8校中2校で女性の長女を含む約30人の待機児童が出る見通しだ。
     女性は夫と長女の3人暮らし。フルタイムで働き、夜勤もこなす。学校がある時期はまだしも、「夏休みに毎日1人で一日中留守番となると心配。せめて長期休みの時だけでも預かってもらえたら助かるのですが」と語る。
     待機児童の増加は児童数が多い地域で目立つ。福岡市のベッドタウンとして児童数が増えている福岡県粕屋町でも、新4年生以上の申し込みが前年比で4割増えたこともあり、約60人が待機児童になりそうだ。町は特に待機児童が多い1校で新たに40人分の施設整備をするが、16年度中の開所は困難。担当者は「対象拡大の周知が進んだこともあり、受け入れが追いつかない」と話す。
     15年度は待機ゼロだった山口県下関市も、住宅やマンション開発で子育て世帯が増えた校区などで、継続利用を希望していた新4年生以上の児童が3月いっぱいで退所せざるを得ないケースもあった。宮崎市では300人規模の待機が出る見込みだ。
     入所対象の拡大に伴い、昨年5月時点の厚生労働省調査で、全国の学童保育の待機児童は前年の1・7倍の1万6941人に急増した。学童保育の数は前年から524カ所増えたものの、ニーズの増加に追いつかないのが現状だ。国は19年度末までに全国で定員を約30万人分増やす計画だが、実際に施設を整備するのは市町村で、計画通り受け皿が増えるかどうかは見通せない。
     全国学童保育連絡協議会(東京)の佐藤愛子・事務局次長は「対象学年の拡大が認知され、身近になれば『家で留守番させるより、低学年から引き続き学童に通わせたい』という保護者は今後も増える。保育所の待機児童問題に比べて後回しにされがちだが、学童保育も着実に増やしてほしい」と訴えている。
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     九州・山口のニュースの背景や深層に迫る新企画「追跡」を随時掲載します。

     ■ことば

    学童保育

     正式には放課後児童クラブ。共働きやひとり親家庭の小学生が、放課後や長期休みなどに遊んだり、おやつを食べたりして過ごす場で、通っている小学校内に併設されていることが多い。1997年の児童福祉法改正で制度化された。対象を「おおむね10歳未満」(3年生)としていたが、4年生進級と同時に預け先がなくなるため、働く保護者らから改善を求める声が上がっていた。昨年4月施行の子ども・子育て支援新制度で全学年に拡大。昨年、初めて100万人を超え、全国で102万4635人(5月現在)が利用している。
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