子供の車内熱中症、「短時間だけ…」が危険 栃木


産経ニュース
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芳賀町の駐車場で7月、乗用車内に放置された保育園男児(2)が死亡する痛ましい事故が起きた。その日、宇都宮市の最高気温は31・4度の真夏日。炎天下で閉め切った車内はすぐに高温になり、県警捜査関係者も「車内は50度を超えていたはず」と胸を痛める。レジャーや帰省など家族で長時間ドライブに出ることも多いこの時期、短い時間だからと、子供を残したまま車を離れるのは非常に危険だ。

 ◆放置で男児死亡

 7月29日、父親の車の後部座席に乗せられた男児が車内に放置され、死亡した。真岡署の調べによると、「仕事のことを考えていた」という父親は保育園に送り届けるのを忘れて出勤。勤務先の広大な駐車場に止めた車の中に残したままだった。妻の電話で気付き、約8時間後の午後5時ごろ、発見したときには、チャイルドシートで息絶えていた。

 半袖半ズボン姿だった次男の腕や足には破裂した水疱(すいほう)の痕が残っていた。捜査関係者も「かわいそうだった」との言葉しかない。酷暑の車内で身動きができないまま日光に照らされ、やけどした痕だった。

 熱中症の可能性が高いとみられ、捜査関係者によると、死亡推定時刻は車内に放置されてから3時間後の正午ごろだ。

 ◆急激に体調変化

 宇都宮記念病院(宇都宮市大通り)の崎尾(さきお)秀彰院長は「車の中は閉め切っていて湿度が高く、温室のような状態」と話す。熱中症の初期症状には、悪心(おしん)嘔吐(おうと)や発汗があるが、未就学児の場合、自分で体調不良を訴えられない。「子供は体温調節機能が未熟で、環境に影響されやすい。さっきまで元気でも、気が付くとぐったりしているなど変化が急に起きることがある」と警鐘を鳴らす。

 JAF栃木支部・事業課交通環境係の久郷(くごう)哲哉係長は「ちょっとの買い物だから5分、10分くらい、と思っても、大人と子供では耐性が違う」と話す。JAFの実験では、気温35度の炎天下で駐車すると、冷房の効いた車内(20度)でも、エンジン停止後、たった15分で車内の気温は31度になるという。外の温度もすぐに超え、「今回のケースは50度を超えていたのではないか」と推測する。

 ◆閉じ込め多発

 昨年8月の1カ月間、子供が車内に閉じ込められ、JAFが出動したケースは全国で236件もあった。子供を車内に残すと、自分でロックして開けられなくなったり、エンジンをかけたままだと、遊んでいて発進してしまったりする危険性もある。久郷さんは「まず、子供を車に残さないことが大事。もしも重大な事態になったら、とにかく通報を」と呼びかける。

 捜査関係者によると、同署の霊安室でわが子の遺体と対面した父親の悲痛な声が署内に響き渡ったという。県警は、重過失致死容疑での父親の立件を検討している。
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