福岡市立こども病院 腎臓も「沈黙の臓器」、尿検査で病気発見


産経ニュース
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□腎疾患科科長・郭義胤医師

 健康診断といえば尿検査があります。尿は、体のいらない水分や老廃物を排出したものです。この老廃物を血液から濾過(ろか)する役割を果たしているのが腎臓です。

 この尿を調べれば、体の中のさまざまな情報、特に病気の重要なサインを認知することができます。腎臓の病気も見つけることができるのです。

 そんな病気の一つに、慢性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)があります。腎臓の濾過装置である糸球体に、炎症が起こる病気です。

 ゆっくりと進行し、自覚症状はほとんどありません。ですが、慢性腎不全に陥ることもある恐い病気です。症状が悪化すれば、人工透析や腎移植が必要になります。

 透析といえば、中高年を中心にした治療というイメージもあります。でも、国内で毎年約50人の子供が、新たに透析が必要になっていると報告されています。

 腎臓の病気で入退院を繰り返し、学校に戻るのがつらいという子供や、見た目は普通なのに、なぜ学校を休むのかと言われ、傷つく子供もいます。

 腎臓病も初期であれば薬で治療し、悪化を防ぐことができます。症状が進めば、何年にもわたって、治療が必要になるケースも少なくありません。

 ところが、腎臓の病気を早期に発見することは難しい。

 腎臓は肝臓とともに「沈黙の臓器」と言われます。

 病気になってもほとんどの場合、痛みを感じません。「体がだるい」など、自覚症状が出たときには、透析が必要となる一歩手前まで悪化しているといえます。

 だからこそ尿検査が重要なのです。検査で異常が見つかり、病院で精密検査をして、分かるケースが多いのです。

 学校での尿検査は昭和48年に始まりました。早期発見・治療が可能となり、腎不全になる子供は大きく減りました。

 ただ、学校の尿検査で異常が出ても、このうち6割程度しか病院の精密検査を受けていない。残りの4割の方は放置している。一見、体に異常がないし、部活や勉強で忙しかったりするのでしょう。

 しかし、決して多くはありませんが、自覚症状がないまま病気が進行し、腎不全になる子供が確実にいます。

 そのほか検査で分かる病気に糖尿病もあります。最近は子供の糖尿病も問題になっています。自分で気づけるのは血尿があったときでしょう。赤や黒のこともあります。検査で悪性腫瘍が見つかったケースもありました。

 腎臓病にかかると、以前は激しい運動ができないと言われていました。しかし、軽度、中等度であれば、安静は必要ありません。スポーツを避けると社会性を育む機会が失われますので、普通に運動してよいことも伝えたいと思います。

 それから、学校でトイレを我慢する子供がいますが、我慢は尿路異常を起こしやすく、重症化すると腎機能障害につながることがありますので、注意が必要です。

 福岡市立こども病院の専門医が、子供に関わる病気・症状を解説する。
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