小規模保育「2歳児まで」の壁


読売新聞
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3歳児以降、連携施設の確保課題


 マンションの一室や空き店舗などを利用する小規模保育所は、待機児童対策として、昨年制度化された。認可保育所に比べて整備しやすいため、都市部を中心に増えている。利用は2歳までで、その後は新たな預け先を見つける必要があるため、保護者には不安も広がっている。

 さいたま市の小規模保育所「ゆめの樹ベビー保育園」は、昨年4月に開設された。0~2歳児を19人預かっている。2階建ての空き倉庫を改装して、1階部分を使っている。
 長女(2)を預ける女性会社員(29)は、「人数が少ない分、家族のようにみてくれ、安心できる。立地も駅の近くにあって便利」という。
 さいたま市の子育て支援の担当者は、「認可保育所は用地確保が難しく、施設の建設などで開園まで時間もかかる。小規模保育所は、場所探しが比較的容易。公的補助も受けられる」と話す。

 小規模保育所は、待機児童が多い0~2歳児の受け皿となり、預かる子どもが少人数のため整備しやすいことなどから注目される。厚生労働省によると、今年4月現在の施設は、昨年の1655か所から、774増え、2429か所となった。待機児童が深刻な東京、埼玉、大阪など都市部での設置が目立つ。国も施設整備費を補助している。
 課題は3歳児以降の預け先の確保だ。原則0~2歳児の利用のため、別の施設に入り直す必要があり、新制度では、小規模保育所に、受け皿となる「連携施設」の確保を求めている。ただ、3歳児以降を預かる認可保育所などの施設も、枠に余裕がないため、確保は難しい状況だ。国は5年間の経過措置を設けている。
 NPO法人全国小規模保育協議会が昨秋、全国102事業者に行った調査では、半数が「連携施設が見つからない」と答えた。
 「ゆめの樹ベビー保育園」も3歳児以降の預け先は見つかっていない。利用する女性会社員は「来年、預け先が見つけられるか不安」と話す。東京都世田谷区は、新設の保育所などに対し、3歳児の枠を増やして、連携施設になるよう要請している。自治体によっては、小規模保育所から移る際に、優先して入れる配慮を検討するところもある。
 連携施設は3歳児以降の預け先という役割のほかに、園庭の開放や異年齢との交流など小規模保育所の保育を支援する役割もある。横浜市では昨年4月から、連携の内容に応じて、連携施設に人件費などとして月額最大23万円の補助を出している。
 調査研究会社、保育システム研究所(東京)代表の吉田正幸さんは、「待機児童問題はしばらく続くとみられる。緊急避難的ではあるが、必要な保育の枠を迅速に整備するために小規模保育の役割は大きい。国や自治体は、認可保育所など連携施設の確保を支援することが必要だ」と話す。(小野仁)
 小規模保育所 昨年4月に始まった国の「子ども・子育て支援新制度」で、市町村の認可事業となった。待機児童が多い0~2歳児を、6~19人預かる(緊急対策として今年4月から22人まで拡大)。少人数を預かる「地域型保育事業」の主力事業。地域型保育事業の利用者は昨年4月現在約2万4000人。全国の待機児童数は、昨年4月現在約2万3000人。
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