産経ニュース様
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男性保育士が働きやすい環境づくりを進めようと、千葉市は新年度から「千葉市立保育所男性保育士活躍推進プラン」を実施する。これまで女性職員が多かった保育士業界で男性の活躍の幅を広げることで、保育の質の向上や父親が積極的に保育に打ち込める環境を整えることが目的。一方で、「男性に女児の世話を任せることに不安がある」といった保護者らからの意見もあり、インターネット上では賛否両論を呼ぶ事態にも発展している。(中辻健太郎)
倉庫で着替える人も
約130人の児童が元気に駆け回る同市美浜区の市立保育所では、12人の正規職員の保育士が勤務。うち4人が男性保育士だ。2歳児のクラスを担任する30代の男性保育士は、「相撲などの体を使った遊びでは男性保育士ならではの活躍ができて、保護者から『楽しかった』といってもらえることもある」「保育していた子供たちが成長し、町中で声をかけてもらえたりするのがうれしい」と、日々の仕事のやりがいを話す。
市幼保運営課によると、市内の公立保育所の数は、認定こども園を含め平成28年4月1日現在で59カ所ある。市内の正規職員の保育士は全体で700人だが、男性保育士の数はそのうち50人と全体の1割を切っている。
男性保育士の数は18年4月で12人、5年後の23年4月には32人と徐々に増えつつある一方で、56人いる保育所長に現在でも男性が1人もいなかったり、保育所の中には男性用のトイレや更衣室が備わっていなかったりと、女性職員が大半を占めている職場で男性保育士の労働環境には課題が残されている。男性は「更衣室がない保育所の中には、男性保育士が倉庫で着替えをしている場所もある」と話す。
働きやすさを追求
同市は「ダイバーシティ(多様性)推進のためには、女性の社会進出の促進と同時に、男性が少数派を占める職場の見直しも必要」とし、男性の育児意識向上も目指した男性保育士の勤務環境の見直しを進めることを決めた。
計画期間は今年4月~39年4月までの10年間。プランではまず、男性保育所長を34年度までに1人、39年度までに5人に増やすといった登用目標を設定。この目標に向けたキャリアデザインとして、市役所の幼保支援課や児童相談所といった育児関連の他部署への配属も積極的に進めていき、将来所長として保育所を運営する素養を深めるとしている。
労働環境については、すべての市立保育所の調査を行い、トイレの男女完全分離化といった整備を進めるなど、働きやすさを追求するという。熊谷俊人市長は「働きやすい環境をつくることで、保育の世界を目指す男性に千葉市で働きたいと思ってもらえることにも期待している」とした。
「女児保育に不安」
だが、市にはこれまでにも保護者らから「女児の着替えやおむつの交換を男性保育士にさせないでほしい」といった保育上の配慮を求める要望も届いているという。ネットの短文投稿サイト「ツイッター」で熊谷市長に対し「女児の着替えを女性保育士に望むことは保護者としては当然」など、不安を吐露する声も上がっている。
これに対し、「男女共同参画社会の実現に向けて必要な施策だ」などとプランの策定を評価する意見もあり、賛否をめぐり議論が過熱化する場面も散見する。
市では昨年9月、各保育所に市の方針として「男性保育士も女性と同様に保育全般に関わる」と保護者に通知するよう要請。入所申込書にも同様の文言を組み込むなどし、保護者らに性差に関わらない保育を実施することへの理解を求めている。
前出の男性保育士は一連の論争に対し、「極端な形で議論が進んでいるのが残念」と懸念を示す。「不安に思う保護者の気持ちももっともだが、現場ではプロの一保育士として、男女隔てなく児童たちに接しているということを分かってもらいたい」と話している。