飯塚市、保育士確保へ模索 認定こども園に期待 [福岡県]


西日本新聞様
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 飯塚市では、希望する保育園に入れずに保護者が申請を取り下げるなどした「実質的な待機児童」が3月、99人に上る。待機児童を解消できない大きな理由の一つが保育士の不足だ。施設の収容力に余裕はあっても、保育士が足りずに定員未満の幼児しか受け入れられない保育園は少なくない。保育士を確保するため、県内全域に採用の枠を広げた募集なども模索されている。
 ◆就職先に「地元志向」
 「急募、正規職員への登用あり」。飯塚市のハローワークの掲示板には、唯一職種を限定した「保育士求人コーナー」がある。3月中旬の募集では、週休2日の正社員で手当込みの初任給は最大で20万円程度だった。
 保育士不足の要因の一つが、他職種より平均年収が100万円近く下回るとされる低賃金だ。飯塚市の常勤保育士の年収は、公立が平均517万円(勤続19・5年)、私立は322万円(同10年)。2016年度の常勤保育士(正規職員)の募集状況は、私立で園平均2人の募集に対し応募が1人、公立では全体で募集6人以内に対し63人の応募があった。保育士の「官民格差」は大きい。
 保育士確保へ、養成機関への期待も大きい。近畿大九州短期大(飯塚市菰田東)の保育科では、13~15年度の卒業生のうち保育関連業種への就職者数は49~60人。飯塚・嘉麻地区への就職はほぼ半数だが、近年は田川地区、直鞍地区を選ぶ学生が増えている。これまで飯塚に集中していた就職先が、卒業生が出身地区周辺で勤務先を選ぶ「地元志向」が強まり、飯塚で学んだ保育士が筑豊各地へ分散してきているのが特徴だ。
 「保育園では行事の準備などで通常の仕事以外に残業も多い。就職で最初から臨時職を希望する学生もいて、保育士不足は低収入だけが問題ではない」。同短大の金俊華保育科学科長はそう指摘した上で、「子育てや幼児教育は自己責任なのか、社会的責任なのか。財源の問題はあるが、国として幼児の保育や教育にかけるお金は足りていない」と話した。
 ◆年間延べ600人に電話
 児童福祉法は、保護者が仕事などで児童の保育ができない場合、自治体には保育の義務があるとしている。飯塚市は、新卒や再就職にかかわらず保育士として市内の私立保育園・認定こども園に就職した人に10万円を助成する支援事業を始め、7月には市内の幼・保・こども園が参加する「合同就職面談会」を初開催する。市子育て支援課の鈴木夏実課長は「市内には数百人の潜在保育士がいて、年間延べ600人に電話でアプローチしている。ただ、再就職希望者と園側とで勤務形態などの条件がなかなか折り合わない」という。
 そうした現状の中、待機児童解消のため市が期待を寄せるのが、3歳児からの幼児教育を行う幼稚園と、0歳児からの保育を行う保育園を一体化した「認定こども園」だ。こども園は市内に4施設あり、18年度までに私立の3幼稚園がこども園に業態を変更する。
 今年4月にこども園に移行する飯塚市の了専寺白菊幼稚園は、園児の定員が45人増える。県内の保育科がある全大学で新卒者を募集するなどして、保育士10人近くの新規雇用にこぎつけた。それでも定員いっぱいの園児受け入れは難しい。細川義朋園長は「保育士は関東からも引きがあり、競争率が高い。0~1歳児を夕方の時間だけ預かる保育士を2人雇い、こども園では業務分担する。保育に専念できる環境づくりが施設側も問われる」と話す。行政や保育の現場で待機児童解消に向けた関係者の試行錯誤が続く。
=2017/03/23付 西日本新聞朝刊=
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