企業内保育 質に注文…都検証委、1歳児死亡で提言


朝日新聞様
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企業が従業員向けに設けた東京都中央区の認可外保育所で昨年3月、1歳男児が死亡した事故を巡り、都の有識者検証委員会が8日、再発防止の提言をまとめた。事故は入所間もなくに起きており、保育所に慣れていないとして1人で寝かせた対応などが不適切だったと指摘。子どもが徐々に集団生活に慣れていく時間を確保できるよう、育児休業明けの社員の復帰に企業側の配慮が必要だとした。【黒田阿紗子】
     保育中の重大事故の検証は今年度から自治体の努力義務とされ、企業の保育所が対象となったのは今回が初めて。政府はこうした保育所の増設を待機児童対策の目玉に据えているが、企業側に保育の知識を深めて質を担保する責任を果たすよう注文を付けた形だ。
     事故があったのは、中央区の複数の企業が従業員向けに契約している認可外保育所「キッズスクウェア日本橋室町」。報告書によると、男児は入所25日目、昼寝の途中に目覚めて泣くのを理由に、職員が別の部屋に1人でうつぶせで寝かせてその場を離れた最中に亡くなった。保育士はいずれも1~4年しか経験がなく、この男児には保育所に慣れるまで預かる時間を徐々に延ばす「慣れ保育」を2週間実施したが、丁寧な関わりが十分でなかったと指摘した。
     報告書は、年度途中に育児休業が終わり職場復帰する社員の利用が多い企業主体の保育所の特性にも言及。4月は園児が少なくても夏から秋以降は増える傾向があり保育計画が立てにくいのに加え、企業の育休制度とも絡む「慣れ保育」期間を施設側からは提案しにくい。このため、特に丁寧な保育が必要な入所後1~2カ月は企業も社員の働き方に配慮するなど、施設との連携を深めるよう求めた。
     また、立ち入り調査が保育所開設から約5年間、一度もなかったことを踏まえ、都に認可外施設に対する巡回指導の強化と結果の公表、国には慣れ保育についてのガイドラインを示すよう提言した。報告書を都に提出した委員長の汐見稔幸・白梅学園大学長は「保育所を作る企業が増えているが、委託先の事業者が大手というだけで安心してしまう実態があり、懸念している。企業も専門性のある人が担当するなどのルールを国に作ってもらいたい」と話した。
    都、全「認可外」巡回へ

    企業の従業員向け保育所
     検証委員会の提言を受け、東京都の担当者は、来年度から都内のすべての認可外保育施設を年1回巡回し、指導結果を公表する方針を示した。
     都内の認可外施設は約1700カ所あり、人手不足で立ち入り調査できるのは年2割程度にとどまっていた。来年度は専門の非常勤職員を新たに20人採用し、全施設の職員配置や安全基準を年1回チェックする。うつぶせ寝をさせないなど施設の特性に応じた指導もして質の向上を図る。
     2015年3月現在、全国に約4600カ所あり、7万人以上の子どもが利用する。大半は認可外で、保育事業者に運営を委託している。今年度から認可保育所と同水準の手厚い公的補助が受けられる「企業主導型保育事業」が始まり、政府は待機児童の受け皿として5万人分の整備を目指す。一方で、保育士の有資格者の要件が認可保育所より緩く、行政の事前チェックが手薄といった問題も指摘される。
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