保育士争奪戦に拍車か 給与補助の自治体増加へ



◆給与を上乗せする主な自治体
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 保育士の給与改善のため、県の保育士処遇改善事業を活用し、十月から給与補助を始める自治体が大幅に増える見通しだ。給与の高い他の自治体への流出を防ごうと、「やむを得ない」と上乗せに踏み切る自治体も。今回の県の補助事業は、さらなる自治体間の格差を招くとの批判の声も上がる。 (林容史、中山岳、堀場達、保母哲、小沢伸介)
 野田市はこれまで「国の全額補助で全体的な底上げを図るべきだ」として、保育士給与補助の実施をしてこなかった。だが、周辺自治体が既に独自で上乗せ補助を実施しているうえ、県の補助事業を利用すれば、さらに増額が見込まれることから、「流出を防ぐためにはやむを得ない」として給与補助を始めることにした。
 県の補助事業は十月から、民間保育士の給与を最大月額二万円を上乗せするもの。県と市町村が二分の一ずつ(政令市の場合、県の助成は四分の一)負担する。
 野田市は県の補助事業について、半額は市町村の持ち出しになり、民間保育士を対象とし、指定管理者制度を導入している公立保育園の保育士を対象外としている点を問題視する。
 市は十月から、民間保育士に月額二万円の手当を支給するが、それに加えて、指定管理者が運営する公立保育所の保育士にも独自に同額を支給する方針だ。
 「処遇改善は本来、国がやるべきこと」(熊谷俊人市長)と主張してきた千葉市も、県の事業を活用し、民間保育所の保育士の給与を月額三万円上乗せする。市幼保運営課の担当者は「これまで船橋や市川など東京都心に近い自治体と給与の差があり、埋めたかった。他の自治体から保育士を奪わないよう、バランスも考えて上乗せ額を決めた」と話す。その上で、自治体間で保育士の争奪戦にならないよう、国による処遇改善も求めている。
 東京都内に近い東葛地域の自治体も、都内への保育士流出に歯止めをかけようと必死だ。
 松戸市が八月に市内の民間保育所など五十二施設に実施したアンケートでは、九施設が給与を理由に他施設に移ったと回答。移った先は、施設の運営費補助として一人当たり月額四万四千円を支出している東京都が最も多かった。
 松戸市は十月から、勤続十一年目までの給与補助額を一律、一人当たり月額四万五千円に引き上げる。その後は二十年目まで毎年、千円ずつ増額し、最大で七万二千円を支給する。このうち県の補助分は一人当たり一万円だ。
 我孫子市の星野順一郎市長は「東葛地域は加算額が比較的高いが、東京は四万円以上なので、人材が流れていかないだろうか」と懸念を示している。
 【我孫子市】市では正規雇用の保育士に対し、1992年以来、独自の給与加算を実施しており、現在は最高で月額2万5000円。10月からは県補助の1万円と併せ、計3万5000円とする。一方、従来は加算対象から外れていた非正規雇用の保育士にも加算金2万円を支給する。
 【柏市】私立保育園の保育士を対象に、市単独の給与加算を4月から実施(月額3万3000円)しており、10月からは県補助の1万円を上乗せし、4万3000円になる。非正規雇用の保育士も新たに処遇改善の対象にした(月額2万円)。
 【鎌ケ谷市】民間保育所などの保育士の給与を10月から月額3万円上乗せする方針。対象は民間保育所や小規模保育事業所に勤務する常勤保育士。県の補助1万円に加え、市が2万円を負担する。
 【印西市】対象は市内の私立保育園と認定こども園に勤める保育士と保育教諭約300人。引き上げ額は3万円(うち県補助1万円)。
 【白井市】対象は市内の私立保育園に勤務する保育士と保育教諭87人。引き上げ額の上限は3万円(1万円は県の補助)。
 【旭市】対象は市内の民間の保育所など9施設の常勤保育士134人。公設民営は市単独で、それ以外は県補助も活用し、10月から1人月額2万円を支給する。

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