毎日新聞様
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保育士の不足解消と負担軽減を目指す群馬県太田市は、「保育ロボット」とIT機器を組み合わせた園児の見守りシステムを民間企業や群馬大と共同開発している。保育士の代わりに、園児の出欠確認や体温測定のほか、昼寝中の異常もチェックする。10月から実証実験を市内の保育園で始め、来年4月の商品・実用化を目指す。
同市などによると、検温と登降園時の確認は保育ロボット「VIVO(ヴィーヴォ)」が担う。高さ約70センチで子どもが親しみやすいようなクマのようなデザイン。近づくと、付き添いの保護者が持つキーホルダーが反応し、園児を識別、登降園時間を記録管理する。さらに内蔵されたサーモグラフィーが園児の体温を計測・記録することもできる。
このほか、0~2歳児については、布団の下にセンサーを取り付け、昼寝時の心拍の状況をキャッチするシステムを導入する。急に起き出す▽呼吸の乱れ▽うつぶせ寝状態--など園児の変化を感知すると、タブレット経由で保育士に知らせる仕組みだ。
内閣府などによると、昨年中に保育所などで発生した死亡事故13件のうち、「睡眠中」が10件と最多で、いずれも0~1歳児が占めた。保育所でのうつぶせ寝状態での死亡事故も過去5年で28件起きており、睡眠中の窒息リスクの除去が保育園運営の課題の一つだ。開発にあたったグローバルブリッヂホールディングス(東京都墨田区)の代表取締役、貞松成(じょう)さんは「保育士の目の届きにくいところを、どう代われるか、チェックしていきたい」と話す。
今回のプロジェクトは太田市が主導。ロボットのデザインは同市出身で国際的に評価されているタイヤホイールのデザイナーの片岡達也さんが担当した。清水聖義市長は「保育士不足解消に向け、『メード・イン・オオタ』で改善・改良、販売へつなげたい」と期待を寄せている。システムの販売価格は当初は400万~500万円を想定し、将来、商業ベースに乗せるには1万台の需要が必要と見込んでいる。
育英短期大(群馬県高崎市)の佐藤達全(たつぜん)教授(保育者論)は、「あくまで補助的な位置づけで、全てを任せてはいけないが、保育士の負担軽減のため、ITやロボットを活用することは大切だろう」と話している。【阿相久志、西銘研志郎】
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