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働くママ・パパにとって、とってもありがたい"保育士"の存在。できれば良い関係を築きたいと思いながらも、その関係性に不安を感じることもありますよね。この連載では、保育園の日常をつぶやいたツイッターが話題の男性保育士「てぃ先生」に、保育士としての"本音"を伺っていきます。
今回は、男性保育士の苦労や意義についてお聞きしました。
男性保育士の苦労男性保育士、どんなことが大変?(画像はイメージ)
どこを見ても女性ばかりの学生時代
――初回のインタビューで、てぃ先生は2年制の保育科を卒業されたとお聞きしました
はい。当時は4年制の大学では男子の受け入れがほとんどなくて、短大や専門なら多少は選べるかなという状況でした。
――キャンパスも当然、女性ばかりで
それは、もう! その話を始めると大変なことになりますよ(笑)。
高3で進路を決めたときに、頭の中では女の子が多いんだろうなと予想していましたし、受験時の状況からして覚悟は決めていたんです。先生や周りの友人からも「女の子ばかりだけど大丈夫か?」って聞かれてもいたので。
で、入学式の日にいざ式場に立ったら、周りはほぼ、女子。右を見ても左を見ても女子。壇上に立っている先生だって女性ばかり。あまりに女性だらけなので、正直言って辞めたいって思いましたね(笑)。そのときは、友達ができる気がしなかったです。
――でも辞めなかった。友達はできましたか?
よくよく見ると1クラス60人の中に男子が4人くらいはいたので、「俺たち4人で生きていこうな」って。そういう意味では少ない男性同士で結束して支え合っていました。
ですから、いまはまだ恵まれているほうじゃないかなって思いますね。僕が実習に行っていた10年ほど前は、保育園に男性の更衣室なんてなくて、トイレで着替えるように言われたりしました。そのトイレだって女性用しかないこともあったし、トイレすらダメなときは、園庭の隅っこの体育倉庫で着替えるように言われたこともありました。
男性保育士と女児のオムツ替え問題
――もともと少ない男性保育士が増えていく過程では、摩擦が起こることもあるだろうと思います。少し前には男性保育士による女児のオムツ替え問題が話題になりましたが、どのように受け止めていましたか?
僕は特にショックということもありませんでした。むしろ男性保育士の数が増えてきたから話題に上がってきたことで、少なかったら話題になることもないのかなと。仮に保護者の方から「うちの娘のオムツ替えをするのはやめてください」って言われたのが自分だったとしても、「分かりました」って言うだけかなという感じです。その後、子どもや親御さんとの信頼関係をしっかり築いていけば、状況が変わっていくこともあると思います。
そもそも保育園というところは、子どもたちが安心して過ごせるのはもちろんですが、親御さんたちにも安心して預けてもらえる場所でなければいけません。保護者の方も男性保育士の存在そのものが嫌だと言っているわけではないと思いますし、僕だったら自分がオムツ替えをしないことで保護者の方に安心して預けてもらえるのなら、それがベストだと思います。
――女性の保育士に代わってもらうことで、業務が滞るというようなことはないんでしょうか?
全員にそう言われてしまったら支障が出てくるかもしれませんが、現状では保育園に1組いるかいないかの話と聞いているので問題ないと思います。
実際、僕の勤めている保育園ではそういう要望は1件もありません。もしそういう要望があっても、女の子を1人世話してもらう代わりに、女性の保育士が見ていた別の子を僕が担当するだけの話です。
オムツ替えって保育士の仕事のうちの、ほんの一部分なんですよ。この話題に関して、一部の男性保育士からは「保育士として認められていないんじゃないかと不安になりました」とか「ショックで辞めたくなりました」という声も聞かれました。ただ僕は、そこまでこだわるところでもないと感じています。だって、他に活躍できる場がたくさんありますから。
――男性保育士のオムツ替えが気になる場合は、保護者としてどのように伝えたら摩擦が少ないでしょうか?
そもそも気になってしまう保護者の方の多くは、保育士の中でも一部の人が行ったわいせつ行為などをニュースで見て、不安に感じているのではないでしょうか。ですから、「不安なので女性の方にお願いしたい」とそのまま伝えれば、保育園側が不快に感じることはないと僕は思います。
ただ、男性保育士に直接言うと、中にはショックを受ける人もいるかもしれませんし、どう対応したらいいか分からないかもしれないので、まず園長や主任に伝えてみるといいかもしれません。
保育士にもママ役とパパ役がいるほうが自然
――男性保育士はもっと増えたほうがいいと思われますか?
少なくとも、いまよりは増えたほうがいいと思います。一般的な家庭にはママとパパがいますよね。保育園は家庭の代わりにお子さんをお預かりする場所なので、保育園にもママ役の保育士だけでなく、パパ役の保育士がいるほうが子どもにとっては自然です。
極端な話をすれば半々でもいいのかもしれませんが、まずは、男性保育士の割合が全体の4分の1くらいに増えたらいいんじゃないかと思います。
――保育士さん側にパパ役、ママ役みたいな意識はあるものなのでしょうか?
そういう意識で保育にあたっている保育士はあまりいないかもしれませんが、必然的にそうなる傾向はあると思います。女性の保育士が園庭を走り回るのも良いですが、体力がある男性の方が遊び自体もダイナミックになりますし、子どもが良い意味でぶつかっていける相手にもなれます。
他にも、大きいものや重いものを運ぶ際には女性がヨイショヨイショと苦労してやるよりも、力の強い男性がポーンと運んでしまえるならその方がいいです。家庭でも役割分担があるように、保育園でもそれぞれができる得意なことをやったほうが効率がいいですよね。
――子どもの態度も相手が男性か女性かで違うのでしょうか?
僕の感覚では違いを感じますね。子どもたちも「男の先生」「女の先生」という意識があるでしょうし、保育士のほうもそれを理解したうえで保育している人が多いように思います。
遊びの中でも例えば、ドッチボールでボールを投げる際、男性の保育士には思いっきり強く投げるけど、女性の保育士には少し加減して投げる子がいる。どの先生にも同じように接しなさいと教育する人もいますが、僕は一人ひとりとの間に違った関係性があるものだと思う。それを見極めるのも、子どもたちの生きる力なのではないでしょうか。
親御さんたちも「男の先生がいてくれて良かった」と言ってくれる方が多いですから、男性保育士は縮こまらずに、胸を張って仕事をしてほしいですね。
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