コラム凡語:保育士の仕事

幼稚園の散歩のイラスト
京都新聞様
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 卒園した小1男児が訪ねてきて保育士らにつぶやいた。「昨日から何も食べてへん」「夜はろうそくもなくて真っ暗」「お風呂は水で冷たい」。

 ただ事ではない。聞けば、祖母に「保育所で話をしてくるように」と言われたという。保育士が家を訪ねて事情が分かった。父親と祖母の3人家族。父親は長期不在で祖母は体調が悪い。お金も食べ物も尽きた。

 祖母は園への送り迎えで保育士らと顔見知りだった。小学校の先生は会ったこともなく、名前も知らない。地域でつながる先は保育所だけだった。

 保育士らはすぐに福祉事務所や小学校などと連絡を取り合った。男児の家は生活支援を受けることになり、元気に通学しているという。京都市北区で実際にあった話だ。

 京都市保育園連盟の報告集に盛り込まれた。貧困や親の障害など、困難の中にいる子どもは少なくない。子どもや家庭の変化にいち早く気づき、必要な機関につなぐこと。それが保育の重要な仕事になっている。

 実業家の堀江貴文氏が保育士について「誰でもできる仕事」とSNSで発信し、議論を招いている。家庭の子育てと同じという趣旨のようだ。若者に影響力がある人の発言だけに、残念に思う。堀江氏には報告集の一読をお勧めしたい。知識や経験が必要な専門職だと分かるはずだ。

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