社会保障、全世代型へ…今年の動き

最低限所得保障・ベーシックインカムのイラスト
読売オンライン様
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幼児教育、無償化議論 高齢者の負担増

 2018年の社会保障施策は「全世代型社会保障」への転換と、医療・介護の効率化が大きなテーマだ。子育て支援では幼児教育・保育の無償化の議論が本格化し、待機児童対策も加速する。国会では働き方改革関連法案の審議も始まる。一方、介護分野では一定所得以上の人が負担増となる。若者もお年寄りも安心できる社会の実現に向けた今年の動きをまとめた。

子育て支援
 2017年末に閣議決定された幼児教育・保育の無償化についての議論が夏にかけて本格化する。

 政府は3~5歳については認可保育所と認定こども園、幼稚園を一律で無償化し、0~2歳は住民税非課税世帯に限り無償化する方針。19年4月にも一部で始まる無償化の残る主要な論点は、全国で約17万人が利用する認可外保育施設や、幼稚園で通常の教育時間より長く子どもを預かる「預かり保育」などの保育サービスのうち、どこまでを無償化の対象とするかだ。近く有識者会議が発足し、夏までに結論を出す。

 待機児童解消へ向けた保育の定員拡大も続く。認可保育施設の待機児童は17年4月時点で全国に約2万6000人おり、3年連続で増加した。政府は17年6月、「20年度末までに待機児童を解消する」として、18年度からの3年間で32万人分の保育定員を増やす計画を公表。18年度は約11万人分を増やす予定だ。定員増による運営費の増加をまかなうため、企業が子育て支援目的で国に支払う拠出金は、18年度は1000億円程度増える予定だ。

 一方、秋に公表される待機児童数が増える可能性が指摘されている。子供が保育所に入れず親が育児休業を延長したケースを待機児童数に含めない自治体があったが、18年度からはどの自治体も原則、待機児童に含めることになったため。子育て施策にも影響を与えそうだ。(樋口郁子)

介護・医療
 現役並みの所得がある高齢者が介護サービスを利用する場合、8月から自己負担割合が2割から3割に上がる。単身者の場合は年収340万円以上で、負担額の上限は月4万4400円。負担増となるのは、利用者全体の約3%(約12万人)程度となる見通しだ。

 4月からは介護保険料も値上がりしそうだ。65歳以上の人が支払う介護保険料(全国平均5514円)は3年に1度、市区町村が見直しており、18年度は改定の年にあたるためだ。

 介護サービスの値段にあたる介護報酬は4月に改定される。具体的な内容は2月にも決まるが、ヘルパーが自宅を訪問して掃除や調理を行う生活援助の担い手要件の緩和と報酬の引き下げ、医療との連携強化などが行われる見通しだ。

 サービスの充実も図られる。若年性認知症の相談窓口が3月までに全都道府県に設置され、4月からは全市区町村で「認知症初期集中支援チーム」の実施が義務付けられる。チームは医療や介護の専門職で構成され、認知症が疑われる人の家を訪ねて生活状況をチェックし、適切なサービスにつなげるのが狙いだ。

 医療サービスの値段にあたる診療報酬も、4月の改定に向けて議論が進んでいる。紹介状なしの受診の場合に5000円かかる大病院の対象が増えるほか、情報通信技術(ICT)を使った遠隔診療や安価な後発医薬品(ジェネリック)の普及が図られる見込みだ。

 また、自営業者や無職の人などが加入する国民健康保険(国保)は、4月から、運営主体が市町村から都道府県に変わる。国保は大幅な赤字を抱えており、運営の広域化で財政基盤を安定させるのが狙い。現在、保険料は市区町村ごとに差があるが、住んでいる市区町村によっては保険料が上がったり、下がったりすることがある。(田中ひろみ)

労働
 資格を取るために専門学校に通うなどした際に受け取れる専門実践教育訓練給付で、受講料などへの支給率(最大60%)が、1月以降に受講が始まった講座から、最大70%になった。

 1月からは、求人の際に書面での明示が求められる内容に、募集している会社の名称や試用期間の有無などが加わった。示した内容を変更する場合は、企業側は原則的に変更内容の書面を労働者に渡し、納得を得た上で雇用契約を結ばなければならない。わざとだまそうとしていることが明確な虚偽の求人申し込みをしたケースには刑事罰が適用されるようになった。

 1月に開会する通常国会では、働き方改革関連法案の審議が行われる。「1か月間の時間外労働は100時間未満」などの上限規制のほか、高収入の専門職らを労働時間などの規制から外す「脱時間給」制度など、労働組合が反対している内容も含まれる見込みだ。

 4月からは、障害者の法定雇用率が0.2ポイントずつ引き上げられ、企業は2.2%に、国や自治体などは2.5%に、都道府県などの教育委員会は2.4%になる。企業の適用対象は従業員の人数(週20時間以上30時間未満の人は0.5人で計算)で決まっているが、現在の「50人以上」から「45.5人以上」に広がる。

 有期契約の労働者でも、同じ企業で契約更新され、通算の勤務年数が5年を超えることが確定すると無期契約への転換を申し込む権利が生まれる。4月以降は権利発生が本格化する見通しだ。(中村剛)

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