保育士確保に自治体間競争過熱 給与上乗せ…財政力で格差「国が主導を」

幼稚園の散歩のイラスト
産経ビズ様
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 待機児童解消に向けて全国で保育士不足が深刻化する中、首都圏では人材確保に向けた自治体間の競争が過熱している。東京都独自の給与上乗せ策に千葉県が追随したが、加算額は各市町が決めるため「県内でも保育士の奪い合いになる」との懸念が噴出。千葉や神奈川など各県は「保育ニーズに見合う人員確保のために、国が十分な給与上乗せを」と訴えている。

 「周辺自治体に後れを取るわけにいかない」。千葉県内の複数の市町からは、私立保育園などで働く保育士の給与加算に踏み切らざるを得なかった切実な声が漏れる。

 昨年10月に県が始めた制度は、市町による加算額分に原則半額(保育士1人当たりの上限月1万円)を補助する仕組み。県は当初、対象となる41市町のうち半数程度での導入を見込んだが、全てが参加を決定。加算額はいずれも月2万円以上だ。

 東京都が2017年度から上乗せ額を月平均約4万4000円に増額したことを受け、人材を引き留めようと始めた千葉県の補助制度。結果として生じつつある県内の「争奪戦」に警戒を強める自治体も少なくない。

 周辺自治体の給与水準を独自調査したり、補助導入の動向を見守ったりして判断したケースも。ある市職員は「国や県は、市町村を巻き込まないでほしい」と批判した。

 東京に隣接する千葉県松戸市では昨年8月の調査で、9施設の保育士が給与を理由に他施設に移ったことが判明。10月からは新人に月4万5000円を加算、保育士にアピールするため、給与明細に「松戸手当」と明記するよう施設側に義務付けた。

 市の担当者は「施設の増設も必要なのだが、人材確保が当面の課題だ」と話す。保育士の栗山彩香さん(25)は「やりがいがある仕事だが、長く続けられるかどうかには、やはり給与が大きく影響する」と率直に語る。

 国は給与の段階的な引き上げなど処遇改善を進めているが、首都圏の保育需要に追いついていないのが実情だ。埼玉、神奈川両県にも、自治体や保育現場から給与加算を求める声が寄せられているというが、県独自の補助は導入していない。

 神奈川県の担当者は「自治体の財政力で格差が生まれてしまう。全国一律で対応すべきだ」と強調。独自の補助を緊急措置と位置付ける千葉県の森田健作知事も「何とか補助している。国にリードしてほしい」と訴えている。

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