保育の無償化 制度設計に無理がある

ピアノに合わせて踊る子供たちのイラスト
信毎web様
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 無理を重ねている感が強まってくる。

 保育の無償化を巡り政府は、認可保育所以外のサービスを利用する世帯については、就労状況や介護の有無などを世帯別に把握して補助する方向で検討を始めた。制限がないと財源が不足するという。

 無償化に対しては、当の母親たちが「保育所の増設と保育士の確保の方が先だ」と訴えている。待機児童を抱える自治体からも同様の声が上がっている。

 子育て支援を重視するにせよ、限られた財源は有効に使ってほしい。現場の要求とのずれを抱えたまま、不十分な制度設計で見切り発車してはならない。

 安倍晋三首相が、幼児教育・保育の無償化を言い出したのは昨年9月だった。借金の穴埋めに充てる予定だった消費税再増税に伴う増収分を財源に回すと主張し、衆院解散の理由とした。

 3〜5歳は原則無償化としたものの、衆院選後、認可外は対象から外す方針に転じた。保護者らは反発。与党からも異論が相次ぎ、政府方針は揺らぎ続けた。

 当然だろう。認可保育所や夜間保育、病児保育が足りないから認可外に預けている。認可保育所には所得に応じて利用料が決まる仕組みがあり、一律に無料とする効果を疑問視する識者もいる。

 保育所用地や保育士の確保に自治体は苦心している。待機児童問題は直ちに解消しない。

 認可外の利用者にこそ支援が必要なのではないか。政府は利用者数や運営実態をつかんでおらず、認可外を一律無料とした場合の費用さえ算出できずにいる。

 認可外サービスをどこまで無償化するかは、政府の有識者検討会が6月をめどに結論を出す。線引きで不公平感が残らないよう十分な配慮を求めたい。

 費用分担にも問題がある。現行の仕組みだと無償化によって地方の負担は4千億円ほど増える。政府は、地方消費税の増収分で賄ってもらうつもりのようだ。

 地方消費税は自治体が自由に使える財源であり、少子化対策に絞っても、他に手を打つべき課題は多い。無償化は国の一方的な発案なのだから、費用についても責任を持つべきだ。

 いまの社会保障の論議には全体の見取り図が欠けている。子育て支援、高齢化対策とバラバラに検討していたのでは相乗効果は引き出せまい。財源も消費税頼みでは限界がある。税制や社会保険の抜本的な見直しを視野に、構想を練らなければならない。


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