保育士負担減へ「補助者」

子供たちを見守る保育士のイラスト
読売オンライン様
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 保育士の負担を軽減し、離職の防止を図るため、奈良市は保育士資格がなくても一定の条件を満たした人について「保育補助者」として、これまで9人を採用した。保育士不足の現場で働いてもらうことにより、保育士を目指す人の増加につなげるのが狙い。一方、保育補助者の仕事自体が知られていない現状もあるため、市はPRに力を入れている。

(松浦彩)

 「はーい、タッチ!」

 トンネル形の遊具からハイハイをしながら出てきた乳児に40歳代の女性が笑顔で声をかけ、手を合わせた。

 昨年11月、奈良市の市立大宮保育園で開かれた保育士体験会。20~40歳代の女性8人が参加し、乳児と遊んだり、工作を手助けしたりした。

 資格はあるが、現在は働いていない「潜在保育士」の現場復帰を促すとともに、保育補助者の採用に向けたPRも兼ねた。3人を育てる40歳代の主婦は資格はないが、「子育てが一段落した時に経験を生かして、子どもと再び触れ合える仕事ができたらと思った」と参加理由を明かした。

 市によると、市内の待機児童数(1月1日時点)は253人(前年同期250人)。市立保育園・認定こども園の計13か所での保育士不足は現在、28人に上る。

 保育士資格がないため、園児の受け入れ人数は変わらないが、保育士の負担軽減につながると期待されるのが保育補助者だ。

 ほかの自治体でも導入は進む一方、市は小学校、幼稚園の教諭や、県が実施する「子育て支援員」の研修受講者、保育士資格取得に向けて学ぶ人らを保育補助者として昨年9月に採用を始めた。これまで9人を採用し、うち5人が保育現場で働く。

 幼稚園教諭として3年間働いた後、育児に専念していた奈良市の40歳代の女性は昨年9月から、市立学園南保育園で平日午前9時~正午に勤務する。「家事と子育てをする一方、子どもと向き合える仕事にもう一度就きたいという希望がかない、幸せ」と話した。

 神田美智代園長は「子どもがぐずっている時や、1人で後れを取って行動している時など、保育士だけでは対応しきれない場面ですごく助かる。もっと来てもらいたいぐらいだ」と期待した。

     ◇

 課題は周知不足だ。市こども園推進課は、市広報誌以外に保育園での体験会やチラシ配布のほか、JR奈良駅でのデジタル掲示板などで保育補助者の募集をアピールする。ただ「期待ほど問い合わせが増えない」(市こども園推進課)という。担当者は「子育てが一段落した人や、子ども好きな人たちに保育補助者という魅力的な仕事があることを知ってもらいたい」と話す。

 子育て支援に詳しい恵泉女学園大の大日向雅美学長(発達心理学)は「地域には、子育て経験を持つ人や保護者対応、書類作成などに優れた人が大勢いる。もちろん資格を持つ保育士にしかできない仕事もあるが、保育補助者を単なる『お手伝い』にするのではなく、互いが協働して保育をすることで、よりよい保育環境を築くことができる」と指摘する。

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