【TOKYOまち・ひと物語】認定NPO法人フローレンス・駒崎弘樹代表理事 障害児保育園を都内で開園

医療従事者と患者のイラスト
産経新聞さま
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たんの吸引などの医療的ケアが日常的に必要な「医療的ケア児」を受け入れる保育園の開園が都内で相次いでいる。その「障害児保育園ヘレン」を運営する認定NPO法人「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事(39)は、「これまでケア児の親は子供に付きっきりで、仕事を辞めざるを得ない状況だった」と強調。全ての子供が保育を受けられ、保護者が働くことを選択できる社会の実現を訴えている。(松崎翼、写真も)

実現へ高いハードル

 障害児保育園ヘレンは、医療的ケア児や、重度の体の不自由と知的障害が重複した「重症心身障害児」を受け入れる施設。保育士や看護師、リハビリのスタッフが協力し、保育に当たる。

 障害児保育園の開設に取り組むきっかけは、医療的ケアが必要な子供を持つ親からの「職場復帰したいが預け先が見つからない」という相談だった。医療的ケア児を長時間預けられる施設はなく、障害児通所施設に1、2時間預けるのが限界。「障害児を1人も預けることができない社会があってはならない」と自身が障害児保育園を運営することを決意した。

 だが、開園には高いハードルが待ち構えていた。都から認可を受けようとしたが、都の担当者は「前例がない」と門前払い。駒崎氏は「都が預からないから私たちがやろうとしているのに、何で邪魔するんだという思いだった」と当時を振り返る。障害児施設は迷惑施設扱いされてしまう場合も多く、物件探しも苦労したという。

 それでも、都議会議員などの協力を得て平成26年に国内で初めて杉並区で障害児保育園を開園。今月1日には、6カ所目となるヘレン中村橋(練馬区貫井)がオープンし、延べ約60人の子供が通ってきた。「仕事を辞めずに済んで本当に良かったという利用者の声に救われた」と駒崎氏。保育を受けることで、医療的ケアを必要としなくなる子供も出てきたという。

「怒り」が原動力

 運営を進める中で、新たな課題も見えてきた。障害児保育園を卒業した後に通う小学校や特別支援学校では、医療的ケア児を持つ親は学校で待機していなければならないといい、駒崎氏は「小学校には看護師がいるのでケアもできるはずだが、教育委員会や学校が何の根拠もない自主ルールを勝手に作っている」と指摘。改善に向けて尽力する考えを示した。

 活動の原動力は「怒り」だ。「子育て支援に驚くほどお金がまわっていない国の予算構造に怒りを覚える。今は医療的ケア児を預かっても採算がとれる状況ではない。国がもっと子育てに予算を充てないといけない」

 駒崎氏によると、医療的ケアが必要な児童は全国で約1万7千人。3~4割の親が働き続けることを希望しているという。「東京の障害児保育園は自分たちの運営でカバーしていく。後は各地域の福祉団体などにノウハウを提供して運営を任せる形で全国に広げていきたい」と力を込めた。

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