「食費」を負担に感じる子育て世帯は確かにある「お金がなくて食料を買えない」

ナイフとフォークで食事をする人のイラスト(男性)
Wezzyさま
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明治安田生命保険相互会社は今月、0~6歳までの子供のがいる既婚男女1100人を対象に実施した「子育てに関するアンケート調査」の結果を発表した。

 「子育て中の夫婦に育児をするにあたっての理想の年収」を聞くと、1029万円(内訳は夫759万円、妻270万円)と回答。現実は755万円(内訳は夫606万円、妻149万円)と、理想とは274万円の差が開いた。

 また、「子育て費用のうち、負担が大きいと感じるもの」という設問では、「保育園・幼稚園代」(61.0%)、「習い事やお稽古事の費用」(41.6%)、「食費」(25.8%)となった。「保育園・幼稚園代」の高さもさることながら、4人に1人が「食費」と回答しているのも驚きだ。

 世帯年収が755万円もあるのに「食費」に困るとは、浪費が過ぎるのではないか――そう白い目で見てしまう人もいるだろう。年収200万円で充分満足な暮らしをしているという独身もいるかもしれない。しかし何年もかけて子供を育てていく期間は、とにかく出て行く金が多い。より良い教育を与えようと思えばなおさらだ。

 低所得世帯では、ますます「食費がきつい」傾向は顕著になると言える。NPO法人キッズドアが、中学生の子供が無料学習会に通っている低所得世帯の保護者に行った調査によると、「過去1年間にお金が足りずに必要な食料を買えなかった経験があるか」を聞いたところ、「よくあった」(1.4%)、「時々あった」(10.9%)、「まれにあった」(22.4%)。3人に1人が経済的な理由から食料が買えない経験をしたことがあるようだ。

包括的な戦略が必要
 満足な食事を摂れていない子供への支援はすでにある。子供に無料または定額で食事を提供する「こども食堂」は増加傾向だ。子供達への貧困支援を行っている法政大学教授の湯浅誠氏は今年4月、「Yahoo!ニュース 個人」の記事内で、「こども食堂」は2年前の7倍以上の2286カ所に増えたと綴っている。

 子供の貧困に胸を痛め、「こども食堂」にボランティアとして携わろうとする人も多い。たとえば、奈良県奈良市にあるとんかつ屋「まるかつ」では、「お腹がすいても、お家にお金がないときやお子さんにおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたいのにご事情があってむずかしいときなどはコソっと店長に相談してください」と書かれた張り紙を掲示し、SNS上で大きな話題を集めている。

 ただ、子供の貧困問題の解決は、個々人の“善意”だけでは難しい。当然、国もこの現状を認知しており、対策を講じている。

 厚生労働省は2016年度から、経済的に苦しい家庭の子供に対して、学習指導や食事提供などをする自治体の取り組みを支援する事業「子どもの生活・学習支援事業(居場所づくり)」を始めた。また、貧困対策を「未来への投資」と位置づけ、個人や企業から寄付金を募り、貧困の状況にある家庭に寄り添った支援を行っているNPO等に助成金を交付する「子供の未来応援基金」を2015年に設置。交付決定が決まった自治体は、2016年では64自治体だったが、2018年には254自治体と年々規模を拡大している。

 しかし、職はあるが賃金が低い、子供を保育園に預けられず安定した職に就けない、離婚した別居親から子供の養育費が支払われない、などが原因で貧困状態に陥っている家庭も存在する。周辺環境の整備も大切だがそれだけではこの問題を解消できず、様々な問題が入り組んでいることを把握し、包括的な戦略が必要だろう。

 キッズドアの調査からもわかるように、「1日3食」が常識ではない子供は少なくない。私達は子供の貧困を他人事と捉えず、この国の喫緊の課題として深い議論を重ねていきたい。

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