「企業保育所」遅れる開業 人手不足が影響、1年延期26カ所 経営破綻、助成金回収も困難に

待機児童のイラスト
西日本新聞さま
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国の助成で運営される「企業主導型保育所」のうち、当初予定より1年近く開業が遅れている保育所が全国で26カ所に上ることが、助成決定などの実務を担う公益財団法人・児童育成協会への取材で分かった。開業を延期していた保育所が経営破綻し、助成金を回収できない事態も発生しており、26カ所はその“予備軍”ともいえる。開業遅れによる助成金の返還規定はなく、抜本的な解決策は見いだせていない。

 協会によると、運営開始予定日を2017年12月末以前に設定していた保育所のうち、26カ所が開業していないという(18年11月20日現在)。既に助成金の一部が支払われている。

 開業遅れの理由について、多くの保育所が工事業者を確保できず、工事が予定通りに進まない、と説明。特に九州の保育所では、16年に発生した熊本地震の復旧作業のため建設需要が高く、工事業者の確保が難しいという。保育士が集まらないという事情もある。

 協会は、26カ所の開業延期理由を合理的とみなし、助成金の返還といったペナルティーを科していない。現実には、どこまでを合理的と認めるか難しい。昨年7月に開業予定だった沖縄県沖縄市の保育所は、施設整備の助成金を受け取っていたが、工事の遅れを理由に開業を延期し、その後、設置事業者が経営破綻した。現在も助成金を回収できていないという。

 一方、認可保育所の場合、工事の遅れや保育士不足での開業延期は目立っていない。福岡県では18年4月に設置を予定した4カ所全てが予定通りに開業した。福岡市は18年4月に開業予定だった20カ所のうち、18カ所が計画通りにオープンした。開業が遅れている2カ所には、まだ助成金を支給していない。福岡市の担当者は「2カ所は工事の遅れや保育士不足ではなく、周辺住民との調整が進まないため開業が遅れている」と話す。

 協会は、開業が遅れている保育所に対し、現地調査の回数を増やすなどして、早期に開業できるよう促す方針。担当者は「現時点では開業の遅れをどの程度認めるかという規定がない。具体的な基準を決めたい」と話している。

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【ワードBOX】企業主導型保育所

 企業が主に従業員向けに設ける保育所。基準を満たせば開設費用の4分の3相当のほか、運営でも認可保育所並みの助成金を受け取れる。都市部で定員20人のモデル例では、助成金額は開設工事だけで1億円強。幅広い企業が負担する「事業主拠出金」が財源。今年3月末時点で助成決定されたのは2597カ所で、総定員数は約6万人。各地で定員割れや閉鎖などのトラブルが相次ぎ、国は有識者による検討委員会を設ける方針。

=2018/11/24付 西日本新聞朝刊=

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