食育に力、のびのび教育 富士に企業主導型保育施設

富士山のイラスト(四角)
中日新聞さま
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富士市大淵に設置された企業主導型の認可外保育施設「むく保育園」が来春、地域の園児を受け入れて本格的に始動する。市が富士山南麓に整備した富士山フロント工業団地の一角にある。食育に力を入れ、個性を伸ばす教育方針のほか、世界的な建築家が設計した斬新な園舎にも注目が集まっている。

 開設したのは、保育園の隣にある弁当製造・宅配会社「ひかり」。沼津市から二〇一〇年に移転した同社は、パートを含めた従業員五十人のうち四十人が女性で、子育て世代も多い。社長と園長を兼ねる高田恵美(しげみ)さん(65)は、沼津時代から従業員の子どもを預かり、保育園などへの送迎も代行。いずれ本格的に教育に携わろうと考えていた。

 一六年に内閣府が企業主導型保育事業を始める情報を知った高田さんは、即座に開園を決意。同年八月に建築家の手塚貴晴さん、由比さん夫妻に設計を依頼した。夫妻は、ドーナツ型園舎の屋根を子どもたちが自由に走り回る「ふじようちえん」(東京都立川市)で経済協力開発機構(OECD)の最優秀賞に輝くなど、国内外で多くの受賞歴を持つ。

保育園の模型と手塚貴晴さん、由比さん夫妻=富士市大淵で

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 つてはなかったが、高田さんは事務所を訪れ「『ダメ』と言わず、可能性を伸ばす」「食材や調理法にこだわり、おやつも手作りする本物の食育」などの教育方針を熱弁。由比さんは「園長の熱意が素晴らしかった」と引き受けた。二カ月後には貴晴さんが現地を訪れ、帰京する新幹線の中で「食の会社だから、おわんを伏せた形にしよう」とデザインを始めるほど、とんとん拍子に話が進んだ。

 今年三月に完成した保育園は、見た目の美しさだけではなく、子どもたちの安全や快適さにこだわった工夫が随所に見られる。木材を多用した丸い園舎は独立した部屋の軒先がつながり、雨にぬれずに子どもたちが走り回れる上、事務室からは中の様子が一望できる。水遊び場は、はだしで遊んでもけがをしないよう砂利の角を丸めた。

 保育や建築の関係者の視察も相次いでいる。富士市は、企業誘致に向けて付加価値を高める施設と期待する。高田さんもいずれは園舎を地域の人たちの行き交う場に、と考えている。「環境や食、建築などの大人の学びの場にもなれば。園舎ができたことで、富士市全体の文化レベルも上がってほしい」

 園では来春の入園希望者や、建物の見学希望者の問い合わせを随時受け付けている。(問)むく保育園=0545(32)7103

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