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共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、厚生労働省が、来年度から職員基準を緩和する方針を示した。
現在、1カ所に有資格者を含む2人以上の配置を義務付けているが、これを拘束力のない参考基準に改め、資格要件も自治体の判断で決められるようにする。
年明けの通常国会に児童福祉法の改正案を提出する予定だ。
緩和されれば、無資格者が十分な研修もなく1人で子どもを預かることも可能になる。これでは事実上の基準撤廃と言えよう。
基準は2015年、子どもの安全確保を目的に、全国一律の最低ラインとして省令で制定された。
短期間で変更する背景には、人材不足で待機児童の解消が進まない自治体の要請がある。
だからといって、学童保育の質の低下を招けば、安心して子どもを預けられなくなる。基準緩和には慎重でなければならない。
現行の基準は、職員2人以上のうち、最低1人は保育士などの資格か一定の実務経験をもち、都道府県の研修を受けた「放課後児童支援員」とするよう求めている。
これを満たせず事業を中止した例もあるため、全国知事会などが「地域や時間帯による違いを踏まえず、2人体制を求めるのは過剰規制」と強く主張し、地方分権改革の有識者会議で了承された。
昨年5月時点の学童保育の利用登録は約117万人で、待機児童は約1万7千人に上る。
子どもの小学校入学を機に、母親が離職を余儀なくされ、「小1の壁」とも言われている。
政府は、来年度から5年間で定員を30万人増やす「新・放課後子ども総合プラン」を打ち出した。
地域によって、児童数が少なかったり、児童支援員の確保が難しいといった事情はあるだろう。
とはいえ、人員配置は安全に直結する問題だ。昨年は保育事故の3割が学童保育で発生している。
そもそも基準を設定した目的の一つは、学童保育で働く人の社会的地位を引き上げ、保育の質向上を図ることだったはずだ。
児童支援員は、低賃金が指摘される保育士よりも賃金が低い。
政府は、支援員の資格要件を緩和する前に、なり手不足を解消するため、待遇改善に力を尽くすのが筋ではないか。
何より、保護者が働いている子どもにとって、学童保育は生活の場である。子どもが落ち着いて過ごせるよう、配慮を求めたい。
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