ポピンズは初任給26万円 保育各社、人材獲得競争過熱

賃金格差のない会社員のイラスト(男女)
日本経済新聞さま
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保育サービス大手が保育士の処遇改善を急いでいる。ポピンズ(東京・渋谷)やグローバルグループは初任給を大幅に引き上げる。ライクキッズネクストは給与などを手厚くした総合職の保育士を採用しキャリア形成を支援する。2019年10月には幼児教育の無償化が始まる。保育需要が高まり人手不足に拍車がかかる見込みで、人材獲得競争が過熱している。

JPホールディングスは保育園の新設などで売り上げ拡大を狙う
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JPホールディングスは保育園の新設などで売り上げ拡大を狙う

全国で200以上の保育施設を運営するポピンズは、1都3県の認可・認証保育園に配属となる大卒の保育士の初任給を約3万5千円増の26万円、短大・専門学校卒は約2万円増の24万3千円にする。同社は既に働く保育士の賃上げも来春に実施する方針で、現在詳細を詰めている。さらに栄養士や資格を持たない現場スタッフなどの賃上げも検討する。

首都圏や大阪府で保育施設を展開するグローバルグループは大卒の保育士の基本給を1万~2万円引き上げ、全国一律で20万2000円とする。都内の認可保育園勤務の場合、手当を含む初任給は24万~26万6千円程度となる見込みだ。全体の賃上げも実施する。勤続年数によって異なるが、最大で8%程度引き上げる方針だ。


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賃上げ以外で保育士の確保を図る動きもある。

ライクキッズネクストは一般保育士より給与や研修を手厚くし、キャリア形成を後押しする職種「総合職保育士」を新設し、19年4月に4人が入社する予定。今後年間30人を同職種で採用したい考えだ。

17年度に大幅な処遇改善を実施した最大手のJPホールディングス(HD)は新卒保育士が働く施設を選んで入社できる制度を導入する。従来は勤務したい地域までしか選べず人材のミスマッチも起きていた。現時点で19年4月入社の内定者約220人のうち約30人が同制度で入社する予定。


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グローバルグループの18年9月期の売上高は前の期比約3割増の170億円となるなど、待機児童解消に向けた保育所の新設ラッシュで各社の業績は好調だ。日経MJの「第36回サービス業調査」によると、17年度の「保育サービス」業界の売上高は16年度比で2割強成長した。

さらなる成長のネックになりそうなのが保育士不足だ。10月のパートタイムを含む常用の有効求人倍率は全体の1.49倍を大きく上回る2.98倍。4年前から1.48ポイント上昇している。保育需要が高く、大手各社が重点的に施設の新設を進める首都圏では特に深刻だ。東京都に限ると、10月の有効求人倍率は5.86倍まで跳ね上がる。

全国の待機児童は18年4月時点で1万9895人で、減少に転じた。一方で、野村総合研究所は申し込みを諦めた人を含め希望したのに保育所に入れていない人は4月時点で34万8千人いると推計する。19年10月には幼児教育の無償化が始まる。利用申し込みが増えれば「隠れ待機児童」が顕在化し保育士不足に拍車がかかる可能性が高い。

保育施設の新設は4月に集中するため、保育士の採用戦線は年明けに山場を迎える。ポピンズのは19年4月の入社が内定している新卒の学生数が現時点で計画の約半数、JPHDは約7割にとどまるなど、各社は人材確保が難航している。初任給の引き上げや多様な働き方の実現を通し、採用数の拡大や内定者のつなぎ留めを図る。
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