保活に不安抱える親…「点数制」どんな仕組み?自治体で差も

減点方式のイラスト(女性)
西日本新聞様
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来年4月の入所に向け、認可保育所の申し込みや選考が各市町村で始まっている。希望した保育所に入れるか心配で、落ち着かない日々を送る保護者もいるだろう。申し込みが定員を超えた場合は、就労や家庭の状況を点数に置き換えて合算し、高い順に入所できる「点数制」を採用する市町村が増えているという。具体的にどんな仕組みで運用されているのだろうか。

 育児休業中の福岡市東区の女性(32)は生後2カ月の次女が4月から入所できるように申し込んでいる。「上の子が通っている保育所に入りたい。きょうだい児がいれば、加点があると聞いているけど、どれぐらい有利になるのかな」

 福岡市では、就労や介護など保育が必要となる理由ごとに決められた「基本点数」に、ひとり親家庭、きょうだい児がいる、などの配慮すべき事情に応じて加算される「調整点数」を足して、合計点を算出する=表参照。

 同市が現在の仕組みを導入したのは、国の「子ども・子育て支援新制度」が始まり保育制度の枠組みが変わった2015年度から。前年に入所選考で優先すべき項目をまとめた通知を国が出しており、それを参考にした。以前は点数制ではなく、今ほど細かく家庭の状況を反映できていなかった。「前より公平性、透明性は高まったのではないか」と担当者は話す。

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 希望する園に入所できない子どもがいる都市部の自治体を中心に、同市のような点数制を採用している。ホームページで点数表など選考基準を公表しているところも多く、枠組みに大きな違いはないが、勤務時間の捉え方や、項目ごとの点数、合算の仕方が市町村によって異なっている。

 例えば、入所の優先順位を大きく左右する保護者の勤務時間。勤務先の短時間勤務制度(時短)を利用する場合、何を勤務時間として捉えるか、対応が分かれている。九州の県庁所在地では福岡、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島の5市が時短を適用した時間で算出。一方、大分市は時短適用前の勤務時間で、長崎市も将来的に適用前の勤務時間で働く予定なら、そちらで算出しているという。

 実態に合わせるべきだという意見がある一方で、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは「地域によってわずかな点差で入所の可否が決まる。両立支援のための時短だが、優先順位が下がることで、利用しにくくなっている面もあるのでは」と問題提起する。

 保護者が求職中だと入りにくい現状もある。多くの自治体で、就労中の人に比べて点数が低く設定されており、長崎市ではフルタイムで働く人の15分の1の点数だ。求職活動をしながら保育所探しをしている保護者は「仕事がないので預けられない。預けられないから仕事が決まらない」という悪循環に陥りがちだ。待機児童が多い地域では、きょうだい加算のない第1子の入所が難しいとの指摘もある。

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 点数制が広がる中、ネット上には「点数を上げるためには」「加点のポイント」など“保活”を有利に進めるための情報が氾濫する。書店にも、不安な保護者の気持ちを見透かしたように、入所のためのノウハウ本がたくさん並んでいる。

 保活をした保護者ら約5500人から回答を得た厚生労働省の調査(16年)では、「認可保育園等への入園の優先順位に感じていることは」(複数回答)との問いに、「はっきりと公表してほしい」が60・2%で最多。「基準を分かりやすくしてほしい」(53・5%)、「決め方に疑問を感じる」(33・5%)と続く。

 宮崎市は九州の県庁所在地で唯一、項目ごとの点数を公表していない。同市の担当者は「どうすれば点数が高くなるのかという意味合いで利用されたら困る」と悪用の可能性を懸念。ただ今後は公表を検討していくという。

 保育政策に詳しい日本総研の主任研究員、池本美香さんは「選考の透明性を確保する上でも、選考基準の公表が大前提」とした上で、「何かを優先すれば、その他の人の点数は相対的に低くなる。全ての人が納得する仕組みは難しい」と話す。限られた枠を保護者同士で奪い合っている現状について、池本さんも普光院さんも「希望した人が全て入所できるように受け皿の整備を急ぐべきだ」と強調した。

=2018/12/18付 西日本新聞朝刊=

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