<NEWS EYE>福知山市 保育の場と雇用充実

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全国的に少子高齢化が進む中、人口約8万人の福知山市の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)が1・96(2008~12年の最新公表値)と府内26市町村でトップ、全国1741市区町村でも34位(本州2位)と上位につけた。地元からも「意外」という声が上がる高水準の背景には何があるのか。(森秀和)

 「仕事や買い物、医療には不便がなく、ほどよく都会。自然や子育ての伝統的な価値観、地域のつながりも残る、ほどよい田舎」。15年前にUターンし、5歳と2歳児を育てる赤井貴恵さん(42)は地元をそう評する。勤務先の子育て支援施設を訪れる母親らからも、「手頃な賃貸物件や遊具のある公園が多い」「複数の子どもがいる人が多く、2人目もという雰囲気がある」と、子どもを産み育てやすい環境を裏付けるような意見が聞かれるという。

 だが、他市町村も様々な施策を展開し、子どもの医療費支援などは市より充実している。市役所内では「ここまで出生率が高い理由は、はっきりしない」との声も上がるが、林田恒宗・子ども政策監は「派手な施策というより、必要な時に必要なことをしてきた結果では」とみる。

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 そこで着目されるのが、歴史的な背景だ。交通の要衝として栄えてきた福知山は京都、伏見(当時)に続いて1937年に市に移行し、早くから都市基盤の整備が進んだ。74年に郊外の長田野で国内最大規模の内陸型工業団地が完成すると、保育所の整備を推進。人口が市より多い舞鶴を上回る数となった。

 2005年のJR高架化後は、市街地南北のアクセスが良くなり、南側の国道9号沿いを中心に各種店舗が進出し、宅地開発も活発化。高校は普通科や工業系など公私立6高がそろい、近隣より多様な進路に対応できる環境と言える。高校卒業と同時に地元を離れる若者は多いが、子育て世代転入が補う格好となっている。

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 子育て支援政策に詳しい京都大大学院の柴田悠准教授は「仕事と子育てのバランス確保が第一」と、出生率と雇用環境の関係に注目する。仕事と家庭の両立や費用への不安が、結婚や子どもを持つことをためらう理由になるからだ。柴田准教授も関わった府の調査では、15歳以上のうち働いている人の割合を示す市の労働力率は、男性が73%で府内4位、女性は49%で5位。市外に通勤する人の割合は低い方から3番目で、職住近接を実現できていることも浮かび上がった。

 市内では結婚している15~49歳女性の割合が58%と府内1位。20歳代など若い世代の出生率が高いことも、2人目の出産につながりやすい要因のようだ。府内の出生率は自然豊かな北部で高く、京都市など南部で低い傾向にあるが、自然を残しながら一定の都市化が進んだ福知山市は、南北両方の長所を擁しているといえそうだ。

 ただ、市人口は00年をピークに下降し、出生数も昨年は711人と13年より約100人減っている。多様化するニーズに対応するため、保育士や質の確保も求められている。柴田准教授は「出生率だけにとらわれず、子育て世代が暮らし続けたくなるまちづくりをすることが重要だ」と指摘する。

  

  ◇地域に合わせた施策必要

 府の昨年の合計特殊出生率は1.31だった。47都道府県では東京、北海道、宮城に次ぐ低さで平均との差は2005年の0.08から0.12に拡大した。出生数は前年比806人減の1万8521人だった。

 府は07年に子育て支援条例、16年に少子化対策条例を施行。来年度まで5年間の新計画で出生数を13年の2万106人から2万2000人に増やす目標を掲げ、子どもの医療費助成や金融機関と連携した融資制度のほか、不妊治療や住宅、婚活の支援などを進める。

 ただ、府内では未婚・晩婚化が顕著で出生率が1.16と低い京都市、1.87と府内2番目ながら若い世代の転出や出生数減少が目立つ舞鶴市と、地域によって課題は異なる。府こども総合対策課は「各部署と連携し、出会いから育児まで各地の実情に合わせた幅広い施策を展開したい」としている。

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