東京)新田保育園の誕生秘話が小説に 園児の母が執筆

作家・小説家のイラスト
朝日新聞さま
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創立70周年を越えた新田保育園(東京都足立区新田2丁目)の誕生秘話が短編小説になった。作者は同園に長女を預けるミステリー作家の柊(ひいらぎ)サナカさん(44)。戦後まもなくの混乱期に、当たり前じゃなかった保育園を、母親や地域の人が支えた歴史を描いた。

小説は記念冊子「どてのこたち」でA5判30ページ。全6章で、青空保育で始まった1947年から、2代目の2階建て園舎ができる69年までを描いた。

保育園ができたのは、45年夏に終わった太平洋戦争の傷痕が残り、日々の食べ物にも困る時代だった。内職など仕事を探す必要があり、子どもの面倒は見きれない母親も少なくなかった。園のある地区は川に囲まれ、川べりで遊ぶ子どもが水難に遭う心配が尽きなかったという。

ログイン前の続きそんな母親たちの声から始まったのが青空保育だった。だが、園舎がないため雨になると保育できない。そこで考えられたのがバスの仮園舎だった。母親たちが地元企業に頼んで資金を集めて、都バスから廃車となった2台を払い下げてもらった。地主に借りた土地まで約2キロを20日かけて人力で移した。

柊さんは2013年にミステリー「婚活島戦記」(宝島社)で作家デビューした。17年に保育園の父母の会の代表を務めた際、野村陽子園長(47)から当時の話を聞き、「多くの人の流した汗があってこの保育園が始まった」と感銘した。園の資料や図書館にある区の水害史などを調べて書き上げた。

柊さんは「私は保育園があるのが当たり前の世代で、ありがたみが増した。他の保育園も同じように地域の人々に支えられた歴史があるはず」と話した。

1冊300円。著作権は父母の会に譲られ、売り上げは園の子ども達のために使われる予定。問い合わせは同園(03・3911・0977)まで。(阿部健祐)

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