集団疎開 保母の勇気

戦時中の男の子のイラスト
読売オンラインさま
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◇倉敷出身・平松監督映画 来月から全国公開

倉敷市出身の平松恵美子監督(51)がメガホンを取った映画「あの日のオルガン」が、来月から全国で公開される。戦時中に保育園を集団疎開させた若い保母たちの群像劇で、話し合い、支え合いながら園児の命を守り抜いていくストーリー。平松監督は「最初から優秀な保母さんたちだったわけではないけど、大きなことを成し遂げた。登場人物と重ね合わせることで、『自分にも可能性がある』と感じてもらえれば」と話している。(松崎遥)

平松監督は岡山大を卒業後、1992年に松竹の「鎌倉映画塾」(神奈川県)に入塾。山田洋次監督作品の助監督や共同脚本を長年務め、2013年、殺処分が迫る犬の親子と、命を救おうと奮闘する保健所職員の実話を基にした「ひまわりと子犬の7日間」で監督デビューした。

監督2作目となる今作の舞台は、太平洋戦争末期の関東地方。戸田恵梨香さん演じる板倉楓は、東京にある保育所の主任保母で、園児を空襲から守るために集団疎開を提案する。反対する保護者を説得し、埼玉県の廃寺に園児53人と保母ら11人で疎開する中で、両親との別れや地域住民からの反発など、様々な困難を知恵を絞って乗り越えていく姿を描いている。

原作は、久保つぎこさん著「君たちは忘れない 疎開保育園物語」。平松監督は読んだ後、「戦争という不自由な時に、自分の頭で考え、行動に移した若い保母さんたちが、子どもたちの命を守った話で、取り組みがいのある題材」と感じたという。

撮影期間は1か月で、たくさんの子どもたちがいた現場では、出演者やスタッフ全員が撮影時間に限らず、積極的に子どもとの交流をするように心がけたほか、平松監督は、俳優たちに「保母さんなんだから、子どもたちの芝居はあなたたちが作ってあげるんだよ」と注文。その結果、保母と園児たちが笑ったり、ふざけ合ったりするシーンでは、演技を超えた自然な表情が収められており、「ここまで子どもたちと逃げないで向き合って撮った映画はないんじゃないか」と手応えを語る。

17日には、地元の倉敷公民館大ホールで試写会があり、平松監督は上映後の舞台あいさつで「尊い行動をした保母さんたちが戦後の幼児教育をリードし、生き抜いた子どもたちが日本の復興を支えた」などと解説。鑑賞した人たちからは、「保母さんの頑張りから勇気をもらった」といった感想が寄せられた。


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