保育、介護… 経験生かした女性の起業支援 高松信金 中四国ウェーブ

起業家のイラスト(女性)
日本経済新聞さま
------------------------------------------------------------------------------------------------

保育や介護など女性の経験に根ざした問題意識から生まれるビジネスを支援する、起業塾の活動が実を結びつつある。高松信用金庫(高松市)が開催する「キャリスタ塾」は女性起業家の育成に取り組んでおり、2018年12月には中小企業庁の「創業機運醸成賞」を受賞した。女性ならではの発想や思いを形にする地道な活動が、地域の課題解決に貢献している。

 事業への思いをプレゼンする発表者(19日、高松市)
画像の拡大
事業への思いをプレゼンする発表者(19日、高松市)

19日に開かれたビジネスプランコンテスト。慣れないプレゼンを前に、発表者は若干の緊張気味。高松信金も初めての運営ということで手探り。それでもキャリスタ塾の卒塾生が訪れて声をかける様子には、さながら同窓会のような温かさがある。

「起業したい女性が事業への思いや悩みを共有し、相談できる場所をつくりたかった」と、高松信金と共同で塾を運営するサンクラッド(高松市)の馬場加奈子社長は話す。自身の起業した経験から先輩として、同じ思いを持つ仲間として運営に携わる。

キャリスタ塾は15年に創設され、起業を考えている、または既に起業している女性を対象に参加者を募集している。女性起業家をゲスト講師に招いて意見交換やディスカッションなどを実施してきた。卒塾生は90人を超え、新たに5人が起業した。地道な取り組みが評価され、中小企業庁の創業機運醸成賞に金融機関として初めて選ばれた。

18年からは起業に向けて経営や財務など具体的な支援をする「キャリスタセカンド」を開設した。「キャリスタ塾」が起業のきっかけ作りを主としていたのと比べ、より実践的な内容で指導している。

ビジネスプランコンテストにはキャリスタセカンドの7人が参加し、事業への思いを審査員に伝えた。子育て、介護、部屋の片付けなど自身の苦労が事業案の基になっている。女性ならではの苦労と決意に、思わず涙ぐむ審査員もいたほどだ。

優勝したのは保育園を運営するチャイルドケア24(高松市)の梶尾裕子社長。創業17年と事業歴は長いが、今後の事業の持続性などが評価された。梶尾氏は「一歩ずつ歩んできたが、キャリスタセカンドは私にまた新しい一歩を踏み出させてくれた」と表彰式で述べた。

起業支援の取り組みが、高松信金の社員にも良い影響を与えているという。塾生は「事業として成立しなくても起業したい」と言うほど気持ちが先行するなかで、高松信金は協力して資金計画などを立てる。思いと事業の継続性を両立させるにはどうすれば良いか、強く意識するようになったという。

今後の展望について高松信金の担当者は「起業を考える女性が、金融機関の窓口にもっと来やすくなるようにしたい」と述べる。女性起業家の一歩に伴走し、地域活性化への歩みを進めていく。(桜木浩己)

------------------------------------------------------------------------------------------------