男性の家庭進出後押し 父親の子育てを支援する大阪教育大准教授 小崎恭弘さん50

育児休暇・育児休業のイラスト(男性)
読売新聞様
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全保育士のうち男性が占める割合と男性の育児休暇取得率はいずれも5%。男女共同参画が実現したとはまだいえない現状の中、女性の社会進出ならぬ「男性の家庭進出」を提唱する。

自身は「保育士」という呼称がない時代に「保母」になった経歴を持つ。大学で保育学などを教えるだけでなく、企業などで講演することも多く、「一番前を走るマイノリティー(少数者)には覚悟と責任が必要だけど、人生は豊かになる」と語り、男性たちの背中を押してきた。

原点は、ボランティアで子どもの野外活動を手伝った高校時代。子どもたちの自由な姿に心をつかまれ、幼児教育の現場に携わりたいと思った。

兵庫県西宮市に男性で初めての保母として採用された。念願だった保育所に配属されたのは7年後。約50人いた職員の中で唯一の男性だった。運動会の万国旗の飾り付けにビワ収穫、故障機器の修理、力仕事――それまでは女性職員がしてきた役が回ってきた。

一方で、鼻を垂らしたままの子と遊んでいると「ふいてあげて。配慮に欠ける」と注意された。男性保育士には、こまやかさや優しさなどの女性らしさに、力強くおおらかな男性らしさという二段構えのかかわり方が期待されていた。だから、「2倍努力した」。

毎朝ほかの女性職員にお茶を出し、チョコレートをもらっていなくてもホワイトデーにはケーキを用意した。「男だから」気が利かないと言われたくない意地だったかもしれない。だが、周囲に自分が理解されていく感覚は心地よかった。

転機は34歳。勤務の傍ら通っていた夜間大学院の時から研究していた男性保育士に関する論文が評価され、「大学の先生にならないか」と誘われた。

保育士にはいつでも戻れるが、大学教員になれるチャンスはそうはない。安定を捨てて変化に挑んだのは、可能性を広げる大切さを園の子どもたちに言い続けてきた自分がまず、実行しなければと思ったからだ。

労働人口減少による人手不足は進み、働き方改革も待ったなしの課題。性差を超えた柔軟な役割分担がより求められているが、長時間労働が当たり前の職場はまだ多い。男性の育休取得も簡単ではない。

家庭や職場、社会で当然とされる価値観を変えるには困難を伴うが、新しい道を切り開く楽しさはきっとある。「新雪の上を滑ることができるのは、最初のスキーヤーだけ」。誰も見たことのない景色を目指し、多くの人が勇気を持って踏み出せる環境作りに貢献したいと考えている。

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