幼児期から「いろんな人いる」 障害理解教育、保育・教育施設の65%が未実施

コスプレの撮影会のイラスト(ヒーロー)
東京新聞さま
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保育所や幼稚園などに障害児の入園が増える一方、保育・幼児教育施設の65・2%で障害を理解させる教育をしていない実態が、東洋大ライフデザイン学部の南野奈津子教授(45)=写真=らの調査で分かった。「必要がない」「やり方が分からない」など消極的な声が目立ち、現場の意識は高まっていない。専門家は「幼児期から障害への理解を深めることで、いろんな人が世の中にいることを知り、子どもたちの価値観が多様化する素地となる」と必要性を話す。 (五十住和樹)

調査は昨年七月、関東の一都六県の保育所、幼稚園、こども園計二千施設を対象に実施。四百六十五施設から回答があった。

障害理解教育をしているのは百六十施設(34・4%)で、未実施は三百三施設(65・2%)。実施しない理由(複数回答あり)は「やり方が分からない」(46・9%)、「人手が足りない」(24・1%)、「必要がない」(21・8%)、「時間がない」(15・5%)の順だった。

一方、実施した施設に効果や具体的な方法を聞くと「(障害がテーマの)絵本の読み聞かせ」(38・1%)、「障害者とのふれあい」(24・4%)、「紙芝居」(11・9%)、「アイマスクなどの障害体験」(5%)の順で多い。ただ、絵本の読み聞かせをした施設の大半が年に一、二回にとどまる。読み聞かせに使った絵本は、生まれつき右手の指がない障害を受け入れて生きる少女を描いた「さっちゃんのまほうのて」(たばたせいいち著、偕成社)が圧倒的に多かった。

障害児保育を行う施設は増えている。今回の調査では全体の80・6%が知的・発達障害児を受け入れていると回答。聴覚障害児は21・3%、視覚障害児は13・3%、肢体が不自由な子は28%だった。

「幼児期からの障害理解教育は、共生社会をつくるための種まきです」。障害理解が専門の筑波大医学医療系、水野智美准教授(45)は、家庭や保育・幼児教育施設での取り組みの重要性を訴える。

水野さんによると、幼児期は「違い」に興味を持って理解する年代。目が見えなかったり、手足の一部が欠けていたり、その違いを日常生活や遊びを通して隠さずに教え、障害者が具体的にどんな生活をしているかをイメージさせることが重要という。さらに、工夫や手助けがあれば自分たち(健常者)と似た生活ができると感じるように促す。「見た目は違っても人としての価値は同じ。いろんな状態の人と一緒に生活することが当たり前と考えるようになる」という。

例えば人形遊び。車いすに乗った人形を与えただけでは、どう遊んだらいいか分からない。そこで「車いすの人はどうしたら買い物に行けるかな」と問い掛けると、「押してあげたら行けるよ」と答えが出て、皆と同じように外出する生活を想像できる。

障害者も自分でできることはたくさんあり、遊びで「障害者はできない人で、お世話される存在」と思い込ませないよう注意が必要だ。障害者の人形は日本ではなかなか手に入らないのが現状という。

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