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待機児解消策として始まった「企業主導型保育事業」に携わる福岡市や近郊の約15の事業者が連携し、運営ノウハウや保育の質の向上を目指す「企業主導型保育協会」を今月設立する。制度開始からまだ3年だが、定員割れや園休止といったトラブルも出ていることから、保育士確保や情報発信で協力し、新しい保育形態を子育て世代や保育士に広く知ってもらおうと結集した。
「企業勤めの子供でないと入れないと思っている親もまだ多く、周知が課題」。福岡市東区に昨年3月に開園した「カレン保育園名島」を経営する阿部弘美さん(38)は言う。
企業主導型保育所は、主に企業が自社の従業員向けに開設する認可外施設で、待機児解消に向けて2016年度に始まった。園によっては、従業員以外の子供を預かる「地域枠」も設け、カレンでは定員12人中7人を地域枠で預かっている。
ブロックで遊ぶサンサン保育園の園児たち=福岡市西区で、徳野仁子撮影
だが、入所の受け付けなどで自治体が深く関与する認可保育所と違って、園児募集や定員割れが生じた場合の運営費の負担は事業者にのしかかる。また、新しい制度ゆえに処遇などが不安視されて保育士の採用に苦戦するケースもある。阿部さんは「経営の悩みは尽きない」と話す。
そんな声を集めようと、企業主導型保育所を運営する有志が昨年11月と1月、福岡市で課題を語る場を企画。阿部さんも参加し、国の委託を受けた児童育成協会(東京)の運営費の助成金支給が開園後半年以上かかった園もあり、どう対処したかなどの活発な情報交換が行われた。
一方、共同で求人するなどの人材確保策や、研修会を合同開催するアイデアも共有できた。そこで、実現を目指して協会を設立することになった。
福岡市西区にある病院職員向けの「サンサン保育園」など7園を運営し、協会設立を呼びかけた小津智一さん(47)は「事業が立ちゆかなくなれば、保育を必要とする子供や親が困る。互いに課題を持ち寄って解決し、より良いサービスにしたい」と期待をかける。
15日に福岡市東区で園見学と設立の会合を開く。問い合わせは、メール(info@place-edu.com)へ。【青木絵美】
企業主導型保育事業
国の委託を受けた児童育成協会による書類の審査で認められれば、認可並みの助成金を受けて開設できる。2017年度末までに約6万人分の受け皿となる2597施設が整備され、今年度も新たに1539施設(3万5000人分)の助成が決定。ただ、保育士の一斉退職や休止なども明らかになり、昨年末から内閣府が検討委員会を設置し、事業内容や実施体制の検証などを進めている。
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