「学童へ双子一緒に」医ケア児の母の願い、京都市が回答せず

双子のイラスト(女性)
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「今日は何して遊んだの?」。京都市南区の原田美鈴さん(43)が、三男の萌立(ほだか)ちゃん(6)に話しかける。萌立ちゃんは「じてんしゃ」とのどを漏れる空気をうまく使って、返事する。生後6カ月の時の心臓手術で気管切開した萌立ちゃんは、たん吸引や酸素吸入が常時必要な「医療的ケア児」だ。春からは双子の兄と一緒に小学校に入学する。だが放課後に学童クラブ(学童保育)に通うことを京都市が認めてくれるのか、美鈴さんは不安な日々を送る。

萌立ちゃんは現在、伏見区にある医療的ケアに対応している幼児園に、双子の兄と別れて通う。母の美鈴さんは「兄弟一緒に学校に通うことを、萌立は楽しみにしている。学童クラブも一緒に」と願い、学童クラブ登録を申し込んだ。

しかし、京都市の担当者側から「たん吸引など医療的ケアを担う職員がいない」と告げられ、自費で看護師を雇うことを説明されたといい、まだ受け入れるとの回答がない。

美鈴さんは、学校に通う障害児を対象とする「放課後等デイサービス」の利用も検討した。だが、医療的ケア児を受け入れる事業所は乏しい。さらに萌立ちゃんは走ることもでき「重度心身障害児」に該当せず、重心型の放課後デイも対象外だった。

「制度のはざまで、受け入れ先がないんです」。美鈴さんは壁に突き当たった。

小学2年の長男から「どうして萌立は別のところに通うの?」と聞かれるたび、美鈴さんはつらい。遠方の放課後デイに一人だけ通わせては、本人にも家族にも負担が大きいと憂う。

京都市育成推進課は、市の学童クラブでの医療的ケア児受け入れについて「一般論だが、ノーマライゼーションの観点から受け入れるのが理想だ。だが医療的ケア児はニーズが千差万別で、安全確保の観点から準備が必要。吸引など医療的ケアは職員が研修を受ければ法的には可能だが、学童クラブの人員態勢や、幅広い年齢層が通い施設が広くないなど課題がある」としている。

同課によると、京都市の学童クラブ事業に登録している約1万4千人のうち、約6%にあたる877人が障害のある児童。対応するため市は学童クラブで「介助者派遣事業」を実施しているという。

4月はもうすぐ、小学校の入学式を楽しみにしている萌立ちゃん。放課後をどう過ごすかは未定のままだ。

■ケア児「受け入れ困難」8割 「支援ノウハウない」半数

京都市は、学童クラブで医療的ケア児を受け入れた前例がない。しかし学童クラブを利用する障害児は多く、放課後等デイサービスと併用している児童もいる。原田さん家族が直面している制度の谷間と医療的ケア児への対応の遅れは、市が今月発表した「障害のある児童に係る実態把握」でも、浮き彫りだ。

市は本年度、障害児支援の必要量の見込みや、医療的ケア児支援を検討するため、保護者や児童発達支援事業者などに調査を実施した。

放課後等デイサービス事業所145カ所のうち、112カ所が回答したが、重症心身障害児や医療的ケア児について81%が「受け入れは困難」と回答。半数近くが「支援のノウハウがない」とし、支援できる職員確保ができないとの声も目立った。

一方、医療的ケア児の保護者からは「知的障害のある子どもへの支援に比べ、支援が少ない」「重心児、医療的ケア児が通える放課後デイが少ない」「医療的ケアがあるため保育所に入所できず、集団生活を経験させられない」など、切実な声が目立った。

「人数が少なく孤立しがち。親の心身両方のケアサービスも増やしてほしい」「ただ受け入れが実現しただけで、制度が追いついていない」「リスク最優先で考えるのではなく、本人の発達、成長を最優先にして」との要望もあった。

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