認可保育 今年も「狭き門」…ニーズ増 施設や人材確保追いつかず

門のイラスト(西洋・半開き)
読売新聞さま
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4月の認可保育施設入園を希望しながら、利用できない家庭が都市部を中心に今年も目立っている。国や自治体は施設整備や保育士確保に力を注ぐが、増え続けるニーズに対応できない状況が続く。専門家は、きめ細かく保育需要を把握することや保育士の働き方改善の必要性を指摘している。(内田淑子、矢子奈穂)

「いつになったら、希望者全員が保育園に入れるのでしょうか」。さいたま市の女性会社員(43)はため息をつく。市に認可保育施設9園の利用を申し込んだが、どこにも入れなかったためだ。

2017年9月に長男を出産。夫婦ともに正社員で、長男が1歳を迎えた昨年秋は保育園に空きがなく、育児休業を延長した。4月入園を目指したが、市から2月、入園できないことを伝える「不承諾通知」が届いた。途方に暮れたが、その後同市内の認可外保育施設から「空きが出た」と連絡を受け、即決したという。

同市によると、4月に入園できる子どもの大半が決まる「1次選考」に8745人の申し込みがあり、約3割の2789人が不承諾通知を受け取った。申し込みは前年より454人増加し、不承諾者数も310人増えた。

市の担当者は「若い共働き世帯が増加し、認可保育所を16園増やしても追いつかない」と説明する。

横浜市でも、1次選考の申し込みが昨年より348人増加し、不承諾者数は前年より236人増えた。昨年4月時点で待機児童数が全国最多の兵庫県明石市も「前年とほぼ同じ状況」という。

出産後も働き続ける女性が増え、少子化でも保育のニーズは高まっている。政府は2020年度までに待機児童数をゼロにする目標を掲げる。ただ、今年10月には幼児教育・保育の無償化が始まる予定で、ある自治体の担当者は「需要がさらに増えれば、待機児童の解消は遠のく」と漏らす。

保育者や研究者らでつくる「保育研究所」(東京)所長の村山祐一さんは、「認可保育施設に入園できなくても、自治体の補助を受けた認可外施設を利用すれば、国が定義する待機児童に含まれない。自治体は待機児童ゼロという数字合わせに終わらせることなく、保護者のニーズがよく表れている1次選考の応募内容をしっかり分析して、希望がかなう計画作りに本腰を入れて取り組んでほしい」と求めている。

潜在保育士 勤務時間など重視
保育が利用できない原因の一つに保育士不足がある。

水戸市では保育士が足りず、今年4月に26か所の認可保育施設で定員通りの受け入れができない見込み。市の担当者は「施設を整備しても、働く保育士がいなければ意味がない」と焦りを見せる。

福岡市でも、保育士が確保できないなどとして、4月から認可保育所1か所が休園する。札幌市や岡山市でも、保育士不足で思うように保育の受け入れが進まないという。

問題解決に向け、保育士資格を持つものの、現在は働いていない「潜在保育士」に注目が集まる。保育士確保のため、就職相談会を開いたり、家賃補助制度を設けたりする自治体が増えている。

野村総合研究所が昨年、条件が合えば働きたいという潜在保育士1000人に聞いたところ、重視することとして約65%が「金銭的報酬が高いこと」以外を選び、「勤務時間や勤務日など、希望に合った働き方」を最も求めていた。

調査を担当した同研究所の武田佳奈さんは「子育てなどと両立できる環境が整えば、潜在保育士をもっと活用できる」と指摘。「国や自治体は、多様な働き方ができるよう補助制度を拡充したり、保育の質の向上にも効果的な事例を積極的に紹介したりすべきだ」と話す。

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