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大津市で散歩中の保育園児の列に車が突っ込み、二人が亡くなった事故は、幼い命を預かる保育士たちに大きな衝撃を与えた。金沢市金石保育所長の安嶋克好(かつこ)さん(50)は「どこでも、どんなときでも、何かが起こるかもしれない、と細心の注意を払わないといけないとあらためて認識した」と語る。(辻渕智之)
「イッチ、ニィ、イッチ、ニィ」。テラスで走っている男の子に保育士が声をかけて手をつないだ。男の子は走るのをやめ、ゆっくり歩きだして隣室でのトンネル遊びに移動した。
テラスは長さ十五メートルほどあるが、幅は二メートルほどしかない。「一歳児のクラスなので速く走れる子と、最近になって歩き始めた子が一緒にいる。走ってぶつかると危ないので」。無理やりではなく、さりげなく走ることをやめさせる「誘導の技」だった。
「熱はなかったです」。サンルームで遊ぶ子どもたちの歓声の背後で、保育士の声がした。他の子に交じって走ったりせず、床の上に転がっていた男児の体調が心配になり、念のために体温を測っていた。
安嶋所長は「(保育士の仕事は)健康面でも環境の安全面でも、各家庭の一番大事な宝であるお子さんの命を守るというのが大前提です」と話す。責任は重いが、「常にいろんな発見のある子どもの世界に身を置けば、自然に笑みがこぼれる。最高の仕事だなと思います」。
施設内にいれば交通事故の危険はないが、金石保育所も散歩を行う。子どもの成長にとって大切だからだ。季節を感じ、庭とは異なる自然の中で体を動かし、虫や植物に接することができる。季節や天候によるが、年長クラスは週に一、二回出かける。
散歩では細心の注意を払う。子どもが列からはみ出ないように気をつけ、横断歩道を渡るときは手を大きく上げる。二クラスが一緒に散歩をすることもある。引率する保育士の数が増えるため、危険を察知する「目」も増える。
今春から保育士になった西川真未さん(22)は「笑顔で保育を楽しみながら、子どもが安全で元気に過ごせるように気をつけたい」と語る。この日、男の子(1つ)を迎えに来た父親に「うんち、ちょっとゆるかったです」と気付いたことをしっかりと伝えていた。
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