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障害のある子どもを対象に音楽を教える珍しい放課後等デイサービスが兵庫県三田市長坂の農村地にある。3月、ピアノ講師の新井由美子さん(60)=同市=が開所した「ピアチェーレ」。親子で歌や楽器を楽しみながら発声や体を動かす訓練ができる。同様の教室は全国に数カ所しかないといい、育児に不安を抱える保護者のよりどころにもなっていると聞いて訪ねた。(山脇未菜美)
ビルの一室にピアノ、ドラム、マリンバが並ぶ。
5月、伊丹市の小学校に通う兄弟がレッスンを受けていた。6年の男児(11)は会話はできるが注意力の散漫なところがある。弟で3年の男児(8)は自閉症で気持ちを表現するのが難しい。
新井さんがピアノで伴奏を弾くと、2人が気持ちよさそうにマイクで歌う。「メリーさんの羊」や「ドラえもん」の主題歌…。集中力が途切れないように、15分後には楽器に移った。
リズムの練習中、弟の男児が興奮してマリンバを激しくたたく。新井さんが「聞いて」と語り掛け、「きらきら星」の演奏を始めた。「小さく、ね♪」。そう伝えると、自然と柔らかな音を紡いだ。
「2人(の挙動)はすごく落ち着いた」と母(42)。1年前から新井さんのもとに通い、少しずつ周りの状況に気がつくようになった。「普段はできないことがあると、すぐ怒ったり諦めたりするんですけどね。音楽は穏やかな時間」とほほ笑む。
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新井さんはデイサービスの原型を2014年につくった。長女(29)がダウン症ということもあり、障害のある子がいきいき過ごせるようにと、神戸市北区の実家に「たおじ音楽サロン」を開設。月1回、新井さんらの生演奏に合わせて自由に歌い踊ってもらうと、毎回約20人が集まるようになった。
すると、「楽器を教えてほしい」という声が増えてきた。安価で教えるにはどうすればいいか思案する中、着目したのが放課後等デイサービスだ。国などの給付を受けて利用料が1割に抑えられる。3月に一般社団法人「心の音楽舎」を発足させ、事業の一つとしてピアチェーレを立ち上げた。
現在、新井さんを含む4人で運営し、三田や阪神間、神戸、大阪府豊中市の小学1年から高校1年の23人が通う。
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レッスンは保護者の付き添いが必須で、1家族が月2回、70分ずつ受ける。
例えば、ある男児が手放せないぬいぐるみは受講中、母親の膝元で“お留守番”してもらう。母親はそばで見守りながら、子どもの成長を実感してもらう。
ピアノの演奏中、子どもの気に入ったフレーズが見つかると、何度も弾かせる。うまくなるたびに褒める。療育で大切なのは、否定するのではなく、できる部分を伸ばすことだという。
「他の人から見たら小さな一歩でも、この子たちには大きな進歩」と新井さん。「親がネガティブになることもあるけど、必ず成長する。音楽を通して前向きになってもらいたい」
ピアチェーレTEL079・506・5600
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