自治体ジレンマ 待機児童、支援充実するほど増加

子供向け英語教室のイラスト
神戸新聞NEXTさま
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4年連続で増加し、過去最多レベルとなった兵庫県内の待機児童数。人口減少が進む中で、各自治体は子育て世帯に「選ばれるまち」を目指し、懸命に待機児童対策を展開する。しかし、施策を充実させるほど需要が喚起されて待機児童が増え、子育て世代の満足度が下がるというジレンマに陥っており、出口は見いだせないのが実情だ。

「第2子以降の保育料無償化や、中学生までの医療費完全無償化が引っ越しの決め手になった」

2016年に東京都目黒区から明石市に移り住んできた女性(32)が、転居先で重視したのは子育て環境だ。現在7カ月の長男がおり、育休中。来年4月の職場復帰を目指しているが、明石市は県内最多の待機児童を抱える激戦エリア。「東京に比べると受け入れ施設が少ない。明石の子育て環境は気に入っているけれど、やっぱり入れるかどうかは心配」と不安を口にする。

同市では、子どもの医療費や保育料などで近隣市との比較を前面に打ち出し、転入者の呼び込みに力を入れる。その成果もあって、13年から同市の人口は5年連続で増加。特に神戸市からの流入が多く、県外からの転入者も373人増となっている。

一方で、転入増が待機児童増加の一因ともなっており、より一層の保育環境整備が迫られている。

人口流出が続く兵庫県にとって、子育て世代をつなぎとめる施策は最重要課題だ。総務省が発表した17年の都道府県別人口移動報告では、25~29歳の女性の流出人数は全国でワースト2位。30~34歳と35~39歳もワースト3位で、兵庫が若い女性層から「選ばれていないまち」となっている。

こうした世代をつなぎとめるための待機児童対策に「家庭のニーズに合わせ、預け先を選べるようにする」ことを重視する自治体は多い。国が整備・運営費を補助し、企業が主に従業員向けに整備する「企業主導型保育所」も急増している。児童育成協会(東京)によると、県内では今年3月末時点で146施設が助成決定を受けた。

神戸市では、幼稚園を保育所機能も併せ持つ「認定こども園」へ移行する支援もしており、今年4月に移行した認定こども園は「パートからフルタイムに切り替える保護者もいる。幼稚園の教育を受けさせたいという共働き世帯の希望にも応えやすい」と話す。

神戸市は「施設の拡大だけでなく、保護者の働き方などのニーズに合った受け皿整備が求められている」としている。(前川茂之、石沢菜々子、藤井伸哉)


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