話題 タダの効果

おもちゃで遊ぶ親子のイラスト(お母さん)
高知新聞さま
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10月から始まる幼児教育・保育の無償化。4歳の子どもを保育園に通わせている知人は、「保育料がタダになるのはうれしいけど…」と複雑な表情を浮かべる。

彼女の場合、無償化で毎月の保育料3万円、卒園までの1年半では計54万円の負担がなくなる。一方で、財源として消費税が8%から10%に上がり、家計の負担は重くなる。足し引きしたらお得感がない、というのが実感という。

実際、増税で知人一家の負担がどれほど増えるか、総務省の家計調査を基に試算してみた。負担増額は年約5万2千円で、10年で約52万円、20年では100万円以上。積もり積もって、無償化の恩恵は吹き飛ぶ。目先の「タダ」がどれほど有効な子育て支援になるのか、やっぱり疑問だ。

子どもの養育や教育にお金がかかりすぎることが少子化を招いているのは確かだが、それだけでは救えない家庭もある。保育関係者からは「特に支援が必要なのは0歳児のお母さん」という声を聞く。

繰り返し起こる児童虐待。厚労省が発表した2016年度の子ども(18歳未満)の虐待死事例では、被害者の65%が0歳児で、加害者の61%は実母だ。

産後うつ、孤立しがちな子育て環境、進まない父親の育児休暇取得…いくつもの問題が絡まり、「母親だからやらねば」という潜在的なプレッシャーや、「子どもは最低3人産んで」などと言う政治家の理解不足が、母親たちを追い込む土壌にもなっている。

まず打つべき手は、母親を“軽く”してあげることではないか。少子化はお金だけでは解決できない。(松田さやか)

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