学童保育、狭い暑い 広がる共働き、増える利用


中日新聞

------------------------------------------------------------------------------------------------ 共働き家庭の小学生が放課後を過ごす学童保育。女性の社会進出に伴って利用者が増え、入所者が国の基準を超え、十分な広さを確保できない施設が出ている。分割しようにも空いた土地が見つからず、人手不足で指導員の確保もままならない。夏に向け、子どもの環境を危惧する声が上がっている。

 壁沿いの棚にランドセルが詰め込まれた名古屋市瑞穂区の弥富・中根第一学童クラブ。60平方メートル足らずの室内には児童が44人。5年生の池田晴音さん(10)は「狭すぎて男子にけられたー」、西村晴貴君(11)は「勉強中、ノートが隣の子のと重なっちゃう」と不満げだ。

 同クラブは2006年、保護者らを中心に開設した。当初は児童数が16人で、広々としていた。利用は増え続け、来年は47人を見込む。

 国は1カ所当たり「おおむね40人以下」という基準を設けており、本来は新たに施設を設けるか、入所を待ってもらわなければならない。池田修会長(47)は「働くお母さんにとって学童の利用は死活問題。できるだけ断りたくない」と明かす。

 同クラブのように保護者が運営する場合、新たな施設を設けるとなると自ら土地を探さなければならない。仮に見つかっても指導員を見つけるのも難しい。現在も指導員の一人は30キロ以上離れた愛知県半田市から長年通ってもらっている。

 父母らが気がかりなのは夏の酷暑。昨年はエアコンを2台から3台に増やし、屋根に遮熱ネットを置いたが、施設の熱気は収まらず、暑さでぐったりする子も出た。

 名古屋市は、施設のプレハブを運営者に無償で貸し出しているが、暑さを心配した父母が資金を出し合い、自前で木造施設を建てた学童保育も。だが、こうした手法がとれるのは経済力に余裕がある一部の学童保育に限られる。池田さんは「子どもたちの生活の場が脅かされていることを知ってほしい」と訴える。

◆広さ基準、3分の1満たさず 名古屋市
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 全国学童保育連絡協議会によると、2018年の学童保育の入所児童は全国で121万人で、10年前より5割以上増えた。

 国の基準では1カ所当たりの児童数は「おおむね40人以下」だが、40人を超す学童は全国に1万1800カ所に上る。「児童1人の面積は1.65平方メートル以上」との基準もあるが、名古屋市では全171カ所のうち、3分の1にあたる56カ所は基準を満たしていない。

 指導員のなり手不足も深刻だ。愛知学童保育連絡協議会の賀屋哲男事務局長(60)によると時給は良くて1000円程度。「子どもの安全を預かる役割に見合わず、時給のいいアルバイトに流れてしまう」と指摘する。

 国は5月の法改正で「指導員2人以上の常駐」の基準を緩和し、自治体判断で「1人配置」に変えられるようにした。ただ、「目が行き届かなくなる」と不安の声は根強い。

 保育所が充実してきた一方で、学童を充実させなければ、働く母親が子の進学に伴い仕事を諦めざるを得ない「小1の壁」に突き当たる。全国学童保育連絡協議会の佐藤愛子事務局次長(45)は「行政も学童の問題に責任をもって取り組んでほしい」と話す。



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