企業型保育所 親子の安心守る制度に


北海道新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------企業主導型保育所の開設名目で、国の助成金を詐取したとして会社社長らが起訴された。

 企業主導型は、企業が主に従業員向けに設ける認可外保育所だ。

 待機児童対策の切り札として、2016年度に制度化された。設置基準は認可施設より緩く、認可並みの助成が受けられる。

 「働き方に応じた柔軟な保育サービス」を目指したが、施設工事費や子どもの数の水増しなど助成金の不正受給が続いた。

 量の拡大を急ぎ、審査や監督の体制をなおざりにしたためだ。制度を見直し、親子の安心・安全を確保しなければならない。

 企業主導型保育所は、子育て支援のために企業が負担する拠出金の使途を広げて財源とした。

 企業の人材確保の一助とするほか、定員に地域枠を設け、地元の待機児童解消も狙っている。

 政府は今年3月末までの3年間で9万人分の受け皿整備を見込み、実際に約3800施設・約8万6千人分の開設を許可した。

 問題は、その中身である。

 内閣府によると、当初2年間に助成が決まった施設の約1割が運営を断念した。開設1年後の平均利用率は定員の7割にとどまる。

 保護者や保育士は、認可施設を選びがちだ。子どもが集まらなかったり、需要があっても必要な保育士を確保できない例がある。

 「保育の質」も心もとない。

 国の委託で助成の実務を担う公益財団法人「児童育成協会」の17年度の監査では、協会の基準を満たさない施設が7割に上った。

 最低2人勤務なのに1人しかいない時間帯がある、給食のアレルギー対応マニュアルがないといった事例は、命に関わりかねない。

 協会は殺到する助成申請に対応できず、ずさんな審査を続け、助成金の支払い遅延も生じた。

 会計検査院は、内閣府が定員の確認や利用者数向上の指導などを協会に求めず、審査が不十分だったことを原因に挙げる。

 見切り発車のつけは明らかだ。再発防止には、委託先による審査や指導の実施状況を点検する仕組みも欠かせない。

 トラブルは企業と契約して施設を設置する専門事業者に目立つ。異業種参入も多く、保育現場への認識不足も指摘されている。

 10月には保育無償化が予定され、需要の拡大が見込まれる。

 待機児童解消は喫緊の課題だが、安全を犠牲にはできない。設置のハードルを下げるなら、質を担保する制度設計が必要だ。



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