斎藤工さん、表現者の原点 シュタイナー教育100周年 渋谷で河瀬さんと対談

語学の勉強をする人のイラスト(男性・リーディング)



東京新聞
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 教科書を使わないオルタナティブ教育の一つ「シュタイナー教育」がドイツで生まれて今年で百周年。十七日、渋谷区で開かれた記念イベントで、俳優斎藤工さんと映画監督の河瀬直美さんが対談した。小学六年まで日本のシュタイナー学校で学んだ斎藤さんは、表現者としての原点がはぐくまれた教育を、水彩画になぞらえて語った。 (柏崎智子)

 斎藤さんは、一九八七年に国内で初めて新宿区に設立されたシュタイナー学校「東京シュタイナーシューレ」(現シュタイナー学園)の二期生で、小学一~六年生の二学期まで在学。河瀬さんは、百周年を記念したショートムービーを制作した。

 シュタイナー教育では、「自分の意志で歩める自由な人を育てる」という理念から、教科書や点数評価はない。演劇や描くことを多く取り入れ、小屋を建てたり、土地の測量をしながら数学の定理を理解するなど独特のカリキュラムを持つ。斎藤さんは、自分で物を一から完成させる手仕事の授業が特に好きだったと振り返った。

 六年生の三学期に公立校へ転校し、教育の違いを実感することに。「公立では物事のプロセスより、答えが優先された」。子どもたちの感情を水彩の色にたとえ、「画面で色が伸び、にじんでほかの色と混ざり合う」ようなシュタイナー教育に対し、公立では「(絵に)輪郭があり、その中に色がある感じだった」と語った。違いを知り、物事のとらえ方の基礎になったと話した。

 ショートムービーの撮影で一年間、季節ごとにシュタイナー学校を訪問して授業や子どもたちの様子を見てきた河瀬さんは「感動的だった。一般の教育を受けてきた大部分の人たちに、かけらでもいいから心が豊かになるこの瞬間を体験してほしい」と語った。

 記念イベントは、シュタイナー学校の関係者らでつくる「未来の教育を考える会・ヴァルドルフ100ジャパン」の主催で、シュタイナー教育を紹介するパネル展も実施した。パネル展は一年かけて東京のほか北海道や神奈川、愛知、福岡県などを巡回する予定。

<シュタイナー学校> 「既存の社会に子どもを合わせるのではなく、子どもの可能性を伸ばし、その自由な発想で人間的な社会をつくる」という思想家ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)の考えに基づき、教育を行う。1919年に初めてドイツで開校し、世界で現在1000校以上あるといわれる。国内では70年代ごろから関心が高まり、現在、小~高等部の学校が北海道、東京、神奈川(相模原)、愛知、京都に計5校、小・中等部の学校が神奈川(横浜)、福岡に1校ずつある。2校が学校法人を取得するなど社会的な認知も進む。幼児教育施設は50以上ある。

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