始まる幼保無償化 なにが変わる? 家計の負担は軽減 保育士の労働環境の改善を 園の安全環境どう担保


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23日に西原町の沖縄キリスト教学院大学・短期大学であった第24回沖縄保育合同研究集会セミナー(主催・沖縄保育問題研究会)。10月に始まる幼児教育・保育の無償化について保育者、保護者、研究者の視点から意見を出し合った。講演した全国保育団体連絡会保育研究所の逆井(さかさい)直紀常務理事は、無償化を契機に「保育の現場が今抱える矛盾を保護者を含めみんなの課題として考えることが重要だ」と強調。保育士の処遇改善問題にも触れ「子どもの権利保障を担う保育士の労働条件を確保することは、各施設でなく国の課題だ」と訴えた。県内関係者4人の発言を詳報する。

■保育士の不足
 「グッピー保育園」(那覇市)のウィンフィールドひろみ園長は、2008年度以降、通常保育に加え特別保育事業、食育やアレルギーなど月齢・個別ごとの対応、虐待防止対策など多くの機能が園に求められるようになったと説明。「養育困難な保護者と伴走し、子育てもする。ぎりぎりの人員で保育の質を高める研修も数多くあり、たくさんの役割がかぶさって大変になっている」と語った。

 一方で15年度のこども関連3法施行や待機児童対策を背景に、保育施設の形態が多様化。16年に86カ園だった那覇市内の施設は、19年で161カ園に増えたとし「無償化は朗報だが、施設増に対して保育士が足りていない」と指摘した。

 さらに、不足原因に「労働環境や業務過重、低賃金、個々の保護者とのコミュニケーションが大変になっていることもある」と言及し「自分たち(各園)だけではどうしようもできないと思う。それでも私たちは夢を持って子どもたちに関わっている」と述べた。

■0〜2歳拡充を
 NPO法人県学童・保育支援センターの二宮千賀子さんは、幼保無償化のメリットについて家計の負担軽減を挙げ、所得階層によっては年間約30万円浮く世帯もあると事例を示した。また県内の公立幼稚園の3年保育の実施が、184園のうち8・7%にとどまるとし「無償化で3年保育の整備に自治体が本腰を入れてほしい」と期待した。

 一方、指導監督基準を満たさない認可外保育施設が対象に含まれたことについて「認可園を希望して外れた親が無償化まで外れるのはやりきれない」という認可外園への補助に肯定的な意見に理解を示しつつも、「子どもにとって何が一番かを考えると、質や安全の公平性の担保だ」と強調。安全基準のクリアが重要だとした。

 0〜2歳が非課税世帯のみの対象であることにも触れ「無償化が少子化対策というなら、産休や育休明けに確実に保育を利用できることが鍵で、3〜5歳のみではもう一人産もうとはならない」と、対象の拡大が必要とした。

■公的責任と補助
 「やえせ北保育園」(八重瀬町)の川武啓介園長は「多種多様な事業主体が保育業界に参入する中で、保育の質をはかる絶対的物差しがなく、評価が難しい現状がある」と説明。数少ない評価の指標となり得る面積や保育士配置基準に満たない認可外保育施設も無償化対象となり、公金が投入されることを懸念した。

 保育士の処遇改善問題について「個人的には、保育士の最低賃金を決め財源を確保してもらえれば解決すると思う」と言及。現行制度では「保育の質を上げながら保育士の給料を上げることは難しい」と述べた。

 無償化に伴って給食費が各園の実費徴収に替わることで、主食費・副食費の設定額の違いによる格差や、滞納で運営上の問題が生じる可能性も指摘。低所得世帯の実費負担増に配慮した園は赤字分を被る恐れがあり、保育における公的責任として行政が補助するよう訴えた。その上で「無償化が保育の質を上げる政策には思えない。だからこそ現場は保護者と共に語り合い、どうあるべきか発信を続けたい」と語った。

■認可外園の基準
 沖縄キリスト教短期大学の糸洲理子准教授は、無償化の実施について「今後の人口減少や少子高齢化を見据え、女性を含めた労働力を確保しながら、子育て世代の負担を軽減し、安心して子どもを産み育てられるようにという狙いがある」と解説した。

 一方、基準未満の認可外施設が対象に含まれることを問題視。内閣府が公表した教育保育施設などでの事故報告集計では、12〜16年の5年間で死亡事故の報告件数が認可保育所は22件、認可外は56件と示し「認可外でも指導監督基準に従い努力している園もある一方で、事故は多い。子どもの安全な保育環境をどのように担保するかが問われる」と訴えた。

 保育の質の向上に関し「保育士が専門職である自覚と誇りを持つことが大事で、それを社会に発信していくことが必要だ」と強調。保育士を取り巻く環境改善にも取り組むことが重要だと指摘した。


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