
中日新聞様
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人より作業が速く、学習能力も備える人工知能(AI)。仕事への導入例が富山県内で現れてきている。人手不足や働き方改革が叫ばれる中、人の代わりや補助がどこまで務まるのか。企業や行政の取り組みを追った。(山中正義、山本真士)
銀行応答 ○ 保育所選考 ×
「なにかお困りのことはありませんか?」。北陸銀行ホームページを開くと、右下に行員風のチャット担当が現れる。クリックして質問の入力画面に移り、質問して回答を得られる。
同行は昨年、北陸三県の地方銀行として初めてAIを活用した自動応答システム「チャットボット」を導入した。営業時間にかかわらず、自動で質問を受け付けて対応している。AIは利用者とのやりとりから学習し、より適切な回答を示せるようになるという。
導入から一年余りで「行員の負担軽減などの効果は測り切れていない」と同行担当者。だが、顧客が支店に足を運んだり電話したりする手間が省け、利便性向上にはつながっている。
商売の“勘どころ”での導入も進む。衣料品・雑貨を店舗やインターネットで販売するブルーコムブルー(高岡市)は今秋を目標に、仕入れにAIの需要予測を取り入れる。
数日間の販売実績から数カ月先~半年後の売れ行きを予測させ、担当者の負担や判断ミスによる損失を減らす。東京のベンチャー企業や大学と協力して開発中。現在の予測精度は50~60%で、導入後も精度の向上を目指す。
背景にあるのは深刻化する人手不足。従業員の中には接客や商品管理などと兼務で仕入れを担い、負担は重い。「社員にお客さんの方を向いて仕事をしてほしい。AIの役割は人間の補助。無人化を目指すわけじゃない」。松田英昭社長(53)はこう強調する。
AIの導入の全てがうまく進んでいるわけではない。富山市は保育所の入所選考での活用に向けて実証試験をしたが、現段階での導入を見送った。入所希望者と保育所の割り当ては、職員が作業した場合と比べて約一割が不適切な回答だったことが主な要因だ。
市によると、毎年四月の入所希望には約二千人が応募し、職員約二十人が作業して適切な園を割り当てている。作業は複雑で過去には時間外勤務が百時間を超えたことも。AIに期待したが、市の担当者は「一割の差は大きい。誤差に抑えないと」と肩を落とす。
まだ活用方法には課題があるが、将来はAIを使った幅広い展開が期待される。
ブルーコムブルーはAIを使った接客も視野に入れ、顧客の特徴や嗜好(しこう)、流行などに応じた商品の提案も目指す。イメージは、ベテラン店長並みの「パーソナルスタイリスト」。松田社長は「AIに過度な期待はしていないが、小さなイノベーションを起こしていけば、後で振り返った時に『あれは大きな変化だった』となるだろう」と考える。
こうしたAI導入に積極的な企業は一部にとどまる。北陸経済研究所(富山市)の藤沢和弘さんは「北陸での関心は高いと思うが、極めて遅れている。何をしたら良いか分かっていない段階」と指摘する。コンサルタントや技術者といった専門人材の不足を挙げ、「北陸の企業にはなかなか難しいのではないか。(本格普及は)次の世代になると思う」と厳しい見方だ。
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