幼保無償化ちぐはぐ 保育料を便乗値上げ 園児増加嫌い申請見送りも



西日本新聞
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消費税増税に伴う幼児教育・保育の無償化で、一部の私立幼稚園や認可外保育施設があらぬ方向に走っている。無償化に合わせたように保育料を値上げしたり、園児増加を嫌って無償化の申請を見送ったり。政府が税収増を待機児童ゼロに向けた「受け皿」整備に使わず、子育て世代の負担軽減という政治アピールを優先した結果、施設側の「自己防衛反応」を招いたようにも映る。
 「え、値上げ?」。首都圏に住む主婦(39)は3歳の息子が通う幼稚園の説明に驚いた。月2万2千円の保育料が段階的に上がり、来年4月からは補助上限を超える月3万円超に。主婦は「実質的な負担は減るが…。どういうこと?」と首をひねる。

 無償化は1日からスタートした。税率引き上げによる税収増を財源に、3~5歳児は原則全ての世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯で、認可保育所と認定こども園の利用料が無料になった。
 ただ、値上げに驚いた主婦のように、幼稚園に通わせる世帯は全額無料になるわけではなく、補助額には月2万5700円の上限がある。認可外保育施設やベビーシッターの利用にも補助に上限がある。
 保育料が上がれば、子育て世代が本来受けられるはずの恩恵が削られかねない。スタッフの待遇改善が目的としても、国の財政負担も増え、納税者にしわ寄せが及ぶ。厚生労働省によると、認可外保育施設にも「便乗値上げ」とみられる事例があり、同省は9月27日、都道府県や政令市に指導を求める通知を出した。
 一方で、無償化で家計負担が減れば、子どもを保育所に預けたい親が増えることが予想され、このため施設によっては無償化に必要な手続きをあえてしないケースもあるという。背景には保育士不足で園児の増加に対応できない事情もあるとみられ、待機児童問題が深刻化する恐れもある。
 無償化は安倍晋三首相が2年前の衆院選で突如打ち出した。税収増の使い道を国の借金返済から転換した形だが、野党や専門家からは「お金を使うなら保育士の待遇改善など『受け皿』づくりを進めないと、待機児童は解消されない」と異論が強かった。
 家計支援としてもちぐはぐさは否めない。日本総合研究所調査部の小方尚子主任研究員は「既に低所得層では保育の無償化や減免が進んでいる。増税は所得にかかわらず負担が増えるが、今回は保育料が高い高所得層ほど家計へのメリットが大きい」と分析。
 子ども2人の保育料が計565万円かかったというファイナンシャルプランナーの森内東香氏は「経済的負担が大きい0~2歳児への支援が抜け落ちている」と指摘し、年間8千億円程度を投じる無償化政策を「保育の現場に即した支援に改善してほしい」と注文する。 (古川幸太郎)

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