子どもの教育不足、懸念増大 ロヒンギャ難民 避難2年超



東京新聞
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ミャンマーで迫害を受けたイスラム教徒少数民族ロヒンギャが、隣国バングラデシュに大量避難を始めてから2年余りたつ。避難生活の長期化に伴い、子どもの教育への懸念が膨らんでいる。約100万人いる難民の半数に当たる約50万人は18歳以下。15~18歳に限れば、現在ほぼ全員に学習の機会がない。教育の不足した「失われた世代」となり、若者が過激な思想や犯罪に走りかねないと、援助関係者は警戒する。 (バングラデシュ南東部コックスバザールで、北川成史、写真も)

 「Welcome! Our learning center!」。簡素な平屋に、子どもたち二十人ほどの歌声が響いた。

 九月、バングラデシュ南東部コックスバザールの難民キャンプにある国連児童基金(ユニセフ)の学習センターを訪れた。四~十四歳を対象に英語やミャンマー語、算数などを教える施設だ。全ての科目が大好きだという少女クシダさん(8つ)は「大きくなったら先生になりたい」とはにかむ。

 センターはキャンプ内の二千五百カ所に開設され、十九万二千人が通う。ただ、密集したキャンプでは施設用地が不足し、四~十四歳のうち二万五千人が教育を受けていない。

 十五~十八歳はさらに深刻だ。ユニセフによると、97%が学習施設に通っていない。担当者は「早い難民の帰還を望むバングラデシュ政府は、教育が定住化を促すとの認識を持っている」と説明。政府による公式な教育は提供されておらず、キャンプでの教育はすべて非公式の扱い。小中学生世代の学習センターは許容されているが、高等教育の提供は困難な状況だ。

 ユニセフは、教育を受けられない十五~十八歳の若者が技能を学んだり、心のケアを受けたりする多目的センターづくりを進める。

 多目的センターでミシンを使った縫製を習う少女モノアラさん(15)は「他の若者にも技術を教えたい」と意欲を見せる。ユニセフの担当者は「何もせず、自暴自棄になると、過激思想や薬物取引など悪い方向に進んだり、児童婚や人身取引の被害に遭ったりする危険がある」と指摘する。

 二〇一七年八月にミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャ武装勢力と治安部隊が衝突後、ロヒンギャへの迫害が広がり、七十万人以上がバングラデシュに逃れた。衝突以前も含めると難民は約百万人に上る。

 両国は今年八月、難民の帰還開始を図ったが希望者が現れず失敗した。ミャンマーでロヒンギャはバングラデシュなどからの不法移民とされており、難民らは帰還後の安全や権利の保障に不信感を抱いている。教育もその一つだ。

 クシダさんら七人の子の母親ドゥラ・ベガムさん(45)は「ミャンマーでロヒンギャの子は差別され、戻っても十分な教育が受けられない」と不安を表す。

 ユニセフは両国や国際社会に、ロヒンギャの子どもに質の高い教育を与える必要性を強調。帰還に向けた環境づくりを求めている。


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