カウンセラー派遣、保育園に広がれ 名古屋市が民間補助へモデル事業


中日新聞
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名古屋市が、プロの心理職「スクールカウンセラー」の民間保育園への派遣を補助する制度を検討している。派遣費を負担している私立保育園から要請を受けての措置で、導入されれば東海地方では初めて。発達障害などの幼児との接し方を専門家が助言することで、保護者の負担軽減や保育士の離職防止が期待され、まずはモデル事業として本年度に試行する。

 現在、市は公立中学校にカウンセラーを常勤させ、小学校にも対応している。民間保育園への補助では、本年度内に市内十六区で一カ所ずつのモデル園で派遣費の四分の三を補助する事業を始める。二年後をめどに本格導入の是非を判断する。公立保育園についても、民間保育園でのモデル事業の成果を踏まえて検討する。

 市に支援要請したのは、名古屋民間保育園連盟。連盟加盟の市内十六園が、カウンセラーの山森紀子さん(47)が一昨年に設立した一般社団法人「みどり保育支援相談」から派遣を受けている。

 「わー、先生また来たの」。市内のある私立保育園を山森さんが訪れると、園児らが歓声を上げた。

 山森さんは臨床心理士の資格を持つ。複数の部屋を回って工作や給食の様子を観察後、それぞれの担当保育士と面談。気になった幼児やその保護者との接し方を助言した。

 「A君は行動が他の子と少しずれてしまいがち。お母さんに乳児から今までの成長の様子を聞いてから、療育の必要があるか考えましょう」。ある保育士は「自分だけでは判断に悩むこともあるが、意見を聞いて自信が持てるようになった」と感謝する。

 山森さんは中学校教諭時代にスクールカウンセラーの重要さを実感し、心理学を学び直すため二〇一三年に退職。大学院での研究を通じて保育園や幼稚園でのカウンセリングが不足している現状を知り、まずは自身の子が通った保育園にカウンセラーとして通った。

 保護者からは「専門機関へ行かなくても相談ができてありがたい」、保育士からは「カウンセラーを介することで問題を指摘しても聞いてくれなかった保護者と意思疎通できるようになった」などと好評だった。

 臨床心理士でもある愛知教育大の広瀬幸市教授(教育学)は「発達に問題がある子どもは幼年期から心理的な関わりを始めた方が改善する可能性が高い。小中学校へのスクールカウンセラー配置が定着した名古屋市だからこそ積極的に取り組んでほしい」と期待している。

 (谷悠己、写真も)

 <保育園・幼稚園へのカウンセラー派遣> 大阪府が2003年に私立幼稚園への臨床心理士ら「キンダーカウンセラー」の派遣補助を初めて制度化し、京都府や兵庫県など関西地方に広がった。関東地方では東京都日野市が幼稚園で、横浜市旭区は保育園での補助制度を事業化した。全国私立保育園連盟は「保育カウンセラー」の名称を商標登録しているが、外部から派遣される専門家ではなく指定の講習を受けた保育園従事者らを指す。
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