幼保無償化 事務職員にしわ寄せ 負担増で退職者も 事務員配置基準なし


東京新聞
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 十月から始まった幼児教育・保育の無償化で、子育て世代の負担は軽くなる一方で、無償化にかかる手続きに追われる園の事務職員の業務が増している。現場からは「事務、経理処理が増えて、すごく忙しい」と悲鳴が上がる。幼保無償化で、事務職員にしわ寄せが及んでいる。(村上一樹)

◆三百人以上の園児の事務処理、一人で
 「幼保無償化で事務仕事が大幅に増えた。力が及ばず体調を崩しかけて、九月いっぱいで園を退職した」。埼玉県内の学校法人が運営する保育施設で事務職員として働いていた三十代女性は、そう打ち明けた。

 女性は保育施設で、三百人以上の園児の事務処理を一人で担っていた。それだけでも大きな負担だったが、幼保無償化で事務量が増えた。

◆家庭ごとに細かな作業が必要に
 幼保無償化は、全ての三~五歳児と低所得世帯の〇~二歳児が対象だが、給食費や延長保育料などは自己負担。女性は、給食費や延長保育料の書類や契約書を改めて各家庭に向けて作成し、保護者の署名などを得なければならなかった。世帯の年収要件などに応じて食費のうちおかず代が免除されるため、家庭ごとに細かな作業が必要だった。

 園側に増員を求めたが、保育士や幼稚園教諭も人手不足で確保に人件費もかさむ中「事務職員の増員まで予算を回せない」と言われたという。保育士や幼稚園教諭の人数は、国が児童数に応じた配置基準を定めているのに対し、事務職員には定めが無い。女性は「事務職員にも配置基準が必要ではないか」と語る。

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◆園の事務職員「仕事が追い付かない」
 幼保無償化は、消費税増税による税収増を財源に、増税と同時に十月から開始。だが自治体や各園に、幼保無償化の詳細な制度の通知があったのは四月になってから。女性は「導入が急すぎた。せめて準備に一年かけていたら」と振り返る。仕事が追いつかず体調を崩しかけて退職を決意。「子どもはかわいいし、こんなことが無かったらもっと働いていたかった」と無念そうに話す。

 現在は体調も回復し、新たな仕事を探す予定だ。「無償化に反対ではないし、待機児童対策で保育所を増やすのも賛成だ。ただ、働く職員のことも考えてほしい」と訴える。

◆幼稚園教諭自ら事務処理を行うケースも
 保護者らでつくる市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「幼保無償化による事務手続きが大変で、事務職員を増員してもまかなえず、幼稚園では教諭自らが事務処理に入っているケースもある」と、各地で同様の問題が起きていると指摘。「保護者から事務職員への問い合わせも多い。給食費の請求などの手続きはこれから行われていくため、今後さらに業務が増える可能性もある」と危惧している。
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