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保育園に行くとき、毎朝「ママと離れたくない。一緒にいたい」と言って泣きます。保育士さんに聞くと日中はけっこう友達と仲良く遊んで楽しそうにやっているとのことですが、とにかく朝が大変です。育て方が間違っていたのでしょうか? どうしたらいいのでしょう? (もやもやママ さん:年中男子)
親野先生からのアドバイス
もやもやママさん、拝読いたしました。
親としてはとても気になるところですね。でも、心配はいりません。これはとてもよくあることです。小学生でもありますから。
子どもの性格は百人百様ですから、何でも平気という図太い子もいれば、ちょっとしたことにも敏感に反応する繊細な子もいます。ご相談のお子さんのように、大勢の子どもがいるところに自分一人で入っていくとき緊張してしまう子はけっこういます。
大人でも、大勢の人がいるところに入っていくのは苦手という人はいます。
それに、小さいうちは自分がもっている資質がストレートに出ることが多いのです。
繊細な子はこのような場面で親に心配を掛けることになるのですが、その繊細さが親を喜ばせてくれることも多いわけです。人の気持ちに敏感できょうだいや友達に優しかったり、感受性が豊かで芸術的なセンスに優れていたりすることも多いのです。
そもそもこの年代では、親と離れるのが寂しくて不安だという気持ちを持っている子はたくさんいます。お子さんの場合、その自分の気持ちを素直に表現できているということです。これはむしろ望ましいことかもしれません。
逆に、すごく寂しくて不安なのにそれを表現できないで無理に押さえ込んでいる子もいます。または、押さえ込まされている子……もいます。その場合、そのストレスが別の形で出ることもあります。
友達やきょうだいにそのストレスをぶつけることもあります。つまり、理由もなく乱暴な振る舞いをしたり、ちょっとしたことでけんかになったりということです。物に対する扱い方が乱暴になり、おもちゃを投げたり机をたたいたりすることもあります。あるいは、必要以上にわがままな振る舞いをして周りを困らせることもあります。
ですから、泣きたいときにはたっぷり泣かせてあげてください。そして、その気持ちに共感してあげてください。「誰も泣いてないよ。泣いてるのは○○ちゃんだけだよ。恥ずかしいね」「そんなことじゃ小学校には入れないよ」などととがめたり、否定的な言い方で叱ったりするのは逆効果になるだけです。
キーワードは共感です。
「ママと離れたくない。一緒にいたい」と言ったら、「ママも離れたくないよ。一緒にいたいね」と言ってあげてください。
「ママが大好きだから、お別れすると寂しいよ」と言ったら、「ママも○○のこと大好きだよ。ママも寂しいよ」と言ってあげてください。
このように共感してあげて、たっぷり泣かせてあげてください。こうすれば、子ども十分に泣くことができます。その分、ストレスが発散されます。そして、「自分の寂しい気持ちがお母さんにもわかってもらえた。お母さんも同じ気持ちなんだ」と感じることができます。
そして、そのあとで、「大丈夫だよ。またすぐ会えるからね」「できるだけ早くお迎えに来るからね」「寂しいときは泣いていいからね」と言ってあげてください。ただし、こういう励ましの言葉を先に言うのはよくありませんので、必ず共感のあとにしてください。
というのも、先に「大丈夫だよ。またすぐ会えるからね」と励ますと、子どもは「ママは自分の悲しくて寂しい気持ちを十分わかってくれてない」と感じてしまうからです。
ところで、実は、子どもも「保育園に行かなければならない」ということが頭ではわかっているのです。頭ではわかっているのですが、寂しくて悲しい気持ちをどうすることもできないでいます。そこで、泣いても仕方がないけど泣いてみたいのです。「ママと離れたくない」と言っても仕方がないけど、言ってみたいのです。
そのとき、「誰も泣いてないよ。泣いてるのは○○ちゃんだけだよ。恥ずかしいね」などと言われたら、ますます悲しくなってしまいます。ストレスが発散されるどころか、かえって倍増してしまいます。
朝の忙しいときなど、ずっと子どもに付き合えないときもあるかもしれませんが、できるだけ付き合ってあげてください。そのとき、「あー、困った困った。毎朝イヤになっちゃう」「恥ずかしいなー。なんでこの子はこうなの」「あーみじめだ。育て方がいけなかったのか」「先生にも迷惑かけてるなー」と感じる必要はまったくありません。
「おー、泣いてる泣いてる」「すごいエネルギーだな。大物かも」「たっぷり泣いていいよー」「まあ、これも個性のひとつなんだ。その分、感性が豊かかも」と心の中で思いながら付き合ってあげてください。心の中ではそう思いながら、子どもには共感してあげるということです。
そして、あとは保育士さんにお願いすればよいでしょう。
それと、一人で部屋の中に入っていくその瞬間にとても大きな不安を感じる子もいます。そういう場合は、誰か仲の良い友達を呼んできてもらって、その子と一緒に中に入るようにするとよいでしょう。ちょっとしたことですが、これで解決する場合もあります。
さて、何とか一日を終えて家に帰ってからの親の対応が大事です。子どもが保育園での様子を話したときは、共感的に聞いてあげることが大切です。共感的に聞いてもらえれば、子どもはたくさん話せてストレス発散になります。また、たくさん子どもが話せると言うことは、親としてはたくさんの情報が得られるということでもあります。園の生活で何か問題がある場合も、見つけやすくなります。
そして、「今日一日保育園でがんばれたね。粘土が上手だねって先生もほめてくれたね」という感じで、たくさんほめてあげてください。園での生活に自信を持てるようにしてあげることが大切です。
また、親は、つい「今日は泣いちゃったけど、明日は泣かないで行ってよ」とストレートに言ってしまいがちですが、言い方には気を付けましょう。
それよりも、朝の状況を子どもなりに客観的に振り返ることができるようにしてあげるとよいでしょう。
たとえば、次のような会話をしてみるのです。
「今日はお部屋に入ってからは平気だったんだね」
「うん。平気だった」
「じゃあ、朝だけ泣きたくなっちゃうんだね」
「そう。ママとお別れするとき悲しくなって、お友達と遊んでると平気になる」
「じゃあ、ママとお別れする前からお友達と遊んじゃおうか」
このように言葉に出して振り返ってみることで、そのときの状況や自分の気持ちを客観的に見られるようになります。すると、漠然としていた不安の正体が自分なりに見えてきます。不安の正体がはっきりしないとき、それは大きくなりますが、はっきりしてくると小さくなります。
ただし、こういう会話は子どもの様子を見ながらやってください。
もやもやママさん、大丈夫ですからね。
子どもはみんな自分のオリジナルペースで成長していきますから。
私が知っているある子は、幼稚園のとき、毎朝お迎えバスを待つ間ずっと大泣きしていました。それが3年間続きましたが、小学校に入学したときからまったく泣かなくなりました。泣かなくなっただけでなく、朝も自分で起きて支度も自分でして登校するようになりました。親も周りの人たちもみんな驚きました。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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