小池氏が誇る待機児童対策 数は減ったけれど…<都知事選 現場から>


東京新聞
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「3年間で約6200人の減少」―。東京都知事選で、小池百合子知事が真っ先に成果を主張するのが待機児童対策だ。公約に掲げた「ゼロ」は実現できていないものの、毎年需要が増える中で着実に減らした実績に胸を張る。だが急激な施設整備は、園庭のない保育所を増やし保育士不足を加速させるなど、現場の負担感は強まっている。(奥野斐)
 「ダンゴムシいたよ」「あ、丸まった!」。今月半ば、中央区の認可保育所の園庭で、汗ばむ陽気の中を園児たちが土をのぞき込み、虫を見せ合っていた。
 今年4月に開園。すぐ横には首都高が走り、約150平方メートルの園庭は広くはないが、砂場もあり、ドングリや桜の木も植えられている。「都心だからこそ、子どもが自然に触れられる園庭を設けたかった。敷地内に遊ばせる場があるのは保育士の負担軽減、余裕にもつながる」。運営する社会福祉法人東京児童協会の職員で、施設整備に携わった保育士の菊地幹さん(34)が話す。
 都によると、2018年4月からの1年間で認可した保育所282カ所のうち、園庭があるのは60カ所だけ。「一部ある」が53カ所で、過半数の169カ所はなかった。「公園まで連れて行き、他園の子がいる中で安全に遊ばせるのは保育士にとって負担は小さくない」と菊地さん。公園の場所の取り合いになることもあるという。

 小池知事は就任後の16年9月、待機児童解消の緊急対策を打ち出した。保育所を整備する市区町村と事業者への費用補助を拡大し、都有地の活用を進めた。認可保育所数は18、19年は毎年約250カ所ずつ増えた。
 この間、認可外施設も含めた全体の保育サービス利用者は毎年1万5000人以上ずつ増加。保育需要が高まる中、待機児童は17年の8586人から約2300人(今年4月、速報値)まで大幅に減らした。
 数字上は待機児童解消に向かうが、「保育の質」は伴っているか。東京の保育士の有効求人倍率は昨年12月時点で5倍を超え、「経験を積んだ園長候補が見つからない」という声も上がる。職員1人当たりの業務量が増え、コロナ禍で「三密」になりやすい環境で働く疲労、手洗いや消毒も増えた。
 都知事選で、各候補は待機児童解消、そのための保育士の労働条件の改善や、給与保障を掲げる。菊地さんは「保育士をサポートする事務員や保育補助員へ補助金を支給するなど、もっと保育士の負担感を減らす施策を」と求める。
 乳幼児の保護者らでつくる「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表は「待機児童は減り、保育士の処遇改善も進めた」と小池都政を評価。一方、事業者間の格差が広がっており、都の補助金が保育士の処遇改善や質の向上につながっていない例もあるとして、「都は事業者の指導や支援にも一層取り組んでほしい」と話した。


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