子育て施策PR合戦 神戸市と明石市 「競争本意でない」でも互いに意識


神戸新聞
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 近年、子育て支援策を充実させてきた神戸市と明石市の競争が続いている。来春にも「待機児童ゼロ」の達成を見据える神戸市は、待機児童の解消に苦しむ明石市の駅に、「0」をアピールするポスターを掲示。一方、明石市は保育士の定着を狙った一時金を神戸と同額に引き上げた。隣り合う両市は「過度な競争は本意ではない」と口をそろえるが、明らかに相手を意識した“戦い”となっている。(初鹿野俊)

■先手は明石

 明石市は2011年の泉房穂市長就任以降、子育て施策に注力。中学生までの医療費や第2子以降の保育料無料を打ち出し、減少傾向だった人口は増加に転じた。15年には、泉市長自ら神戸市垂水区の商業施設に乗り込み、明石の住みよさをアピールした。

 16年には、広報紙や公式サイトで神戸市などと名指しで比較して子育て費用が安いと強調した。神戸市の幹部がいらだちを募らせる中、17年度の神戸市から明石市への転出超過は、子育て世代とされる25~39歳で641人に上った。

 この頃から、神戸市の反攻が始まる。

■抜きつ抜かれつ

 子育て世代の流入とともに、明石市の待機児童数は17年4月に近畿最多の547人に上るなど深刻化していた。待機を解消する保育枠拡大に不可欠なのが、保育人材の確保だった。

 16年12月、明石市が国の補助制度を活用した宿舎借り上げ支援を始めると、神戸市も17年4月に開始。明石が継続して勤務する保育士への一時金独自加算に乗り出すと、神戸も8カ月後に補正予算を可決した。

 支給額は「抜きつ抜かれつ」を繰り返し、18年度、神戸が勤続7年で計160万円の給付を打ち出すが、明石も今年6月の補正予算で追い付いた。「神戸と対等にしたかった」と明石市待機児童対策室。神戸市こども企画課も「他都市でも、特に明石は気になる」と対抗心がのぞく。

■巻き返す神戸

 神戸市は19年度、公園などを活用して保育施設整備を進め、市全体で目標を200人上回る約1400人分の保育枠を確保。待機児童は昨春の217人から今春は52人まで減らした。25~39歳の明石市への転出超過も18年度544人、19年度360人と減少した。

 「待機ゼロ」が現実味を帯びてきたとして、神戸市は6月、「0」と大きく書いたポスターを明石市内のJR明石、西明石、大久保駅に掲示した。担当者は「神戸市西部の市民に向けたものだ」と説明する。

 一方、明石市の待機児童数は4月時点で365人。2年連続の減だが、昨年度の保育定員拡大は目標の半分に満たない約450人にとどまった。本年度は保育定員1500人増、保育士220人獲得を目指す。


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